2019年2月17日(日)

多様性こそ会社発展の原動力
ライフネット生命保険会長兼CEO 出口治明

2015/11/17 12:00
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東京都渋谷区で「渋谷区パートナーシップ証明書」の発行が始まりました。世田谷区でも「世田谷パートナーシップ宣誓書」の取り組みがスタートしました。いずれも同性のパートナー関係を男女の婚姻関係に準じたものと認める制度です。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

ライフネット生命も一定の条件のもとに同性のパートナーの方にも死亡保険金を受け取っていただけるようにしました。この取り組みについて予想を上回る反響が寄せられています。当事者の方々がこれまで苦労されてきた表れだと思っています。当社の取り組みが少しでも当事者の皆さんのお役に立つのであれば、これほどうれしいことはありません。

同性のパートナー関係については理解され始めるようになりました。しかし、わが国では旧来の価値観や社会常識が根強く残っているように思います。例えば夫婦別姓の問題です。

日本で夫婦が同じ姓を名乗るという慣行が定着したのは明治時代からだといわれています。「日本人は同姓でなくては駄目だ」「日本の伝統が崩れてしまう」といった話を耳にすることがあります。ですが、夫が妻のもとに通っていた妻問婚であった平安時代などを想起すれば、日本も夫婦別姓の国だったことがすぐにわかります。

経済協力開発機構(OECD)に加盟している世界の先進国で法律婚の条件に同姓であることを強要している国は、実は日本だけなのです。

同じ姓を希望する人は同じ姓を名乗り、同じ姓を名乗ることを希望しない人は同じ姓を名乗らない――。こうしたシンプルな話でも一向に進まない。このような社会は非寛容だと感じます。

ビジネス面においても日本は圧倒的な男性社会です。年功序列システムにより若者の活躍の場が少ないことは言うまでもありません。これは冷戦構造下における(1)キャッチアップ型モデル(2)人口の増加(3)高度成長――という3点セットに起因するもので、その淵源は1938年の国家総動員法に求められます。

しかし、それはもはや過去のことです。このような特別な状況は歴史的、世界的に見れば極めて特殊であり、決して普遍的なものではありません。「ガラパゴス的」とも言えるでしょう。

我々は過去の社会常識に捉われず「ダイバーシティ(多様性)」こそが会社発展の原動力になると考えなければなりません。我が国には、女性や若者、外国人が活躍できるような仕組みを作る必要があります。

「人間が一番嫌がることは、価値観の押しつけである」。これは私が学生時代に哲学者の市井三郎氏の著書「歴史の進歩とはなにか」(岩波新書)を読んで腹落ちしたことです。

人間は十人十色であり、みんなが異なっています。嫌なことを強制されたくないし、他人の価値観を押しつけられたくないはずです。

市井氏は誰もが自分の良心に照らして自分が好きなように生きることができる社会をつくることを「歴史の進歩」と呼ぶと主張しました。全くその通りだと思います。性別や国籍、思想、信条などにかかわりなく、機会が均等に与えられて好きなように仕事を選んで自由に生きられることが人間の幸せだと思います。

人間は誰しも何かを「変えたい、よくしたい」と思っているはずです。この世界をどのようなものなのかを理解し、どこを変えたいのかを考え、自分はその中でどの部分を担うのか――。それが生きることであり、仕事をすることなのではないでしょうか。

我々は従来の価値観や社会常識にとらわれないようにしなければなりません。自分が心の底から納得した考え方に照らして行動を起こしていくべきだと思います。

[日経産業新聞2015年10月12日付]

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