貸し切りバス足りない 北陸、新幹線効果で需要増
「少子化進めば…」増車に慎重な業者も

2015/11/10 3:30
保存
共有
印刷
その他

バスが足りない――。北陸3県で新幹線開業を機に貸し切りバスの需要が高まっている。観光やコンベンションでの利用者が増え、バス会社が予約を断る例も多い。各社は昨年の制度改正による上限運賃引き上げの恩恵も受け、大幅増収を見込む。ただ、人手不足や少子化の進行を考えれば増車には動きづらい。商機はあっても積極策が打てないジレンマを抱える。

■旅客3倍に

新幹線開業で貸し切りバスの利用が増えている(金沢駅の団体用バス乗り場)

新幹線開業で貸し切りバスの利用が増えている(金沢駅の団体用バス乗り場)

石川県最大のバス会社、北陸鉄道(金沢市)。今秋分の貸し切りバスの予約は例年になく早く入り始め、半年前の今春には受注に制限をかけた。「昨年なら予約は1カ月前で間に合った。今年はコンベンションで使う団体の予約が特に多い」(田口成樹自動車部長)

3月の新幹線開業後、同社が抱える60台強の貸し切りバスがフル稼働する日もある。田口部長は「平日の利用も多く、需要に波がない」と驚く。

北陸でツアーを仕立てる旅行会社の間で今、「最大の心配事」といわれているのがバスの確保だ。3県には2013年度実績で1647台の貸し切りバスがあり、近年はほぼ横ばい状況にある。

そこに、首都圏から昨年比3倍の旅客を運んでくる新幹線が開業し、バスが需要に追い付かなくなった。大手バス会社が注文に応え切れずに車両を数台しか持たない運行会社に仕事を回すが、それでも予約に応じ切れない場合も多いという。

富山県高岡市に本社を置く加越能バスの貸し切りバス部門は、4~9月期で前年同期に比べて10%程度の増収になったようだ。「需要が増え、収益も拡大するいい環境になってきた」。新庄一洋取締役は手応えを語る。

国土交通省は昨年、12年に関越自動車道で起こったバス事故を念頭に、安全確保のコストを反映する必要があるとして上限運賃を引き上げた。価格競争が激しい業界だったが、制度改定と利用増が重なり「受注価格は1割上昇している」(バス会社幹部)。各社の収益は軒並み好転している。

近鉄グループの北日本観光自動車(金沢市)は9月、運転手が1カ月間欠勤なく勤務した場合に支給する手当を2000円引き上げ、月5000円にした。同社の4~9月期の貸し切りバスの売上高は約2割増と好調だが、悩みは運転手不足だ。「稼いだ収益の一部は人件費に回して、人手の確保につなげたい」(栢本和哉総務部長)

■路線バス強化

同社は貸し切りバス40台強を持つが、運転手は30人にとどまり、予約を断らざるを得ない場合も多い。人手確保策として、年内にもトラックの運転免許を持つ人が入社してバス免許を取る場合、取得費用の40万円を支給する制度を導入する。5年間勤務すれば返済は不要とし、転職者が入社しやすくする。「1年間に5人程度の採用を目指す」(栢本部長)という。

一方、態勢の拡充に慎重な企業もある。新幹線の敦賀延伸を22年度に控える福井県を地盤とする京福バス(福井市)。安宅道人常務は「少子化が進めば遠足など教育関連の利用が減る。規模は増やせない」。経営に余力があれば、景気に左右される貸し切りバスよりも「観光地に向かう路線バスを強化する」戦略だ。

バス業界は長年、縮小路線を続けてきた。車両や人手確保のために投資をして戦線を拡大するか。それとも現行のままで手堅く稼ぐか。活況の中にあって各社は悩ましい判断を迫られている。(金沢支局 国司田拓児)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]