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「オープンイノベーション」阻む日本の商習慣

ブランドン・ヒル(米ビートラックスCEO)

1つの企業が他の企業や外部の経営資源を利用することで新たな事業形態を生み出す――。「オープンイノベーション」と呼ばれるこうした取り組みが注目されている。オープンイノベーションには、企業間の垣根を超えた協業(コラボレーション)や、企業と個人のコラボレーション、社員以外でも自由に参加できるアイデアコンテストなど、複数のスタイルが存在する。これらは外の力を借りて一緒に新たな事業形態を創り出し、社内の経営資源だけでは実現不可能だった成果を得る事を目的としている。

オープンイノベーションは最近になって日本でも認知度が上がってきた。だが、海外ではすでに一般的となっている。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は新規商品のアイデアをインターネットを通じてユーザーから募集し、実現できるアイデアは商品化を進めている。ウェブサービスを行っている多くの企業では、ユーザーの登録やログイン方法に米フェイスブックのシステムを利用するのが一般的である。企業は自分たちの得意分野に経営資源を集中させながら、他の分野では社外の経営資源を上手に活用してより効率的な事業展開を実現している。

一方、日本企業はこれまでの商習慣がハードルとなり、外部の経営資源を上手に活用できていないようである。多くの日本企業では、社内情報が社外秘とされているため、外部の人とやり取りするときに機密保持契約を結ばなければならない。これでは自由なディスカッションすらままならない。契約内容もいったん決まった後は変更が難しく、海外では一般的とされる条件交渉に柔軟に対応できない。これは担当部署と法務部門とのやり取りが頻繁に行われていないことが理由であろう。

日本で常識とされている「月末締め、翌月末払い」の支払い条件も海外の商習慣とは大きな隔たりがある。しかも納品・検収が行われてからでないと請求書を発行できないため、受注する側がいつ支払いを受けられるかの確証が得られにくい。こうした商習慣は恐らく日本特有の下請け取引の中で生まれたと思われるが、海外企業が日本企業と取引するときの大きなハードルになっている。

こうした日本特有の商習慣は、随分以前に「社内規定」として定めた内容に関して異を唱える者が少なかったことに原因があると思う。発注側がリスクをコントロールし、優位に取引を進められるようになっている。一方、受注側はかなりのリスクと不利な条件を受け入れなければならないことが常識になってしまっている。

海外では、ある程度の規模のプロジェクトを発注する際には、全体の半額分を手付金として支払うことが期待されている。その後の支払いも納品・検収型ではなく、プロジェクトのスケジュールに合わせて毎月定期的に行われる。

契約内容も必要に応じてこまかなチェックを行い、受注側が変更を求めた条件に関しては発注側も柔軟に対応するのが普通だ。これは発注先を「下請け」ではなく、あくまで同等な立場の「パートナー」として認識しているのが大きな理由である。

今後、日本企業が海外企業・研究機関と組んで新たなイノベーションを創出するには、リスクを恐れずに既存の商習慣から生み出された規定を柔軟に変更する必要があるだろう。それには関係各部署だけではなく、企業のトップが社内規定の大幅な見直しの必要性を理解しなければならない。

[日経産業新聞2015年11月10日付]

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