/

芸術品を保管・レンタル ITで人とアートつなぐ

野呂 エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

「芸術の秋」というようになぜか秋になるとアートに触れたい気分になる。だが、実際に芸術のハードルは高い。銀座の画廊に入ったら、あっという間に貯金は底をつくような気がする。我が家のような賃貸マンションには似合うはずもない。

サイトには絵画のほか立体物のオブジェも

できれば芸術品も試して飾ってみたい。そう感じていたところ、ネットを使って芸術品を貸してくれるサービスを、ART STAND(東京・品川)が始めた。同社は寺田倉庫がアートを通じた様々な活動を手掛けるモーフィング(東京都国分寺市)と共同で今年10月に設立した。

現在サイトには約500人の作家の平面、立体含め、約5300点の作品を展示している。絵画はもちろん、かぶり物や立体物のオブジェ、天井からつるす作品もある。いずれもレンタル・購入できる。

これまで多くのアーティストは家に展示物を置いて自らのサイトにアップしていた。そして時々展示会に出展したり、オークションサイトに出品したりしている。

だが実際には作品がそんなに売れるわけではない。そもそも、サイトへの誘導がうまくいかない。アーティストは情報技術(IT)の専門家ではないので、集客できるわけではない。作ったアート作品はどんどん部屋にたまってしまう。保管場所がないので、仕方なくレンタル倉庫を利用しているのが現状だ。

そんなアーティストが抱える問題を解決するためにART STANDのサービスは生まれた。すべて同社に送れば作品を自分で抱え置いておくための倉庫代もかからない。同社の手により、多くの人に目につくのだ。

ハンドメードやDIYの普及によって、主婦や学生ら一般の人々がものをつくるようになり、Etsyやminneといったハンドメードを専門とする電子商取引(EC)が増えている。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身、46歳。

ART STANDの加藤晃央社長は「平面絵画だけでなく、椅子や電気スタンドなどアーティストの作った一点ものをレンタルできるようにすれば、アートを身近な存在にすることができるのではないか」と考えた。

自分の借りたいものをクリックするだけ。気になる価格は3日間レンタルの場合は3千円から120万円、購入は5千円から600万円(いずれも最高金額は予定、送料は別)。万が一作品を傷つけたり壊したりした場合、一定額までの保証がある。

10月から事前登録を始めたところ、個人のほか、テレビ番組やCM、プロモーションビデオなどの映像制作会社からの問い合わせやレンタルの依頼が相次いでいるという。

確かにそうだ。アート作品を買うとなると金額的にも精神的にもハードルが高い。レンタルとなると気が楽である。一度借りてから購入するという人も多いという。まずは飾る場所に置いてみて、様子を見てみたいのだろう。イメージできるよう、サイト上の作品を自宅の写真と合成して見られるような仕組みがあればよいと思う。

アートとレンタルをITで結びつけることで、地方の芸術家も瞬く間に全国区になれるチャンスが生まれる。これまでアート作品が流通しなかったCMやミュージックビデオなどの分野や、世界に進出できる可能性もある。これからは芸術の秋にかぎらず、季節ごとに好きなアート作品を借りるというスタイルが定着するだろう。

[日経MJ2015年11月8日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン