2019年2月17日(日)

春秋

2015/11/5 3:30
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森鴎外の「雁(がん)」は鳥類図鑑のコーナーに収まり、芥川龍之介の「芋粥(いもがゆ)」は各種料理本に交じり、宮沢賢治の「注文の多い料理店」はグルメガイドの仲間に――。まさかそんな図書館が、と笑ってはいけない。最近、似たような出来事が実際にあって物議をかもしている。

▼「TSUTAYA」を展開する会社が運営する、神奈川県海老名市立中央図書館の話だ。東野圭吾さんの小説「手紙」が「手紙の書き方」の棚にあったり、旧約聖書の「出エジプト記」が海外旅行の本に分類されていたりして、市民から批判が相次いだという。間もなく修正されたそうだが、利用者の困惑顔が目に浮かぶ。

▼佐賀県武雄市に第1号が誕生して以来、この会社の図書館をめぐる話題は尽きない。旧弊を打ち破ろうという試みは分かるのだが、図書館で大切なのは選書と配架である。そこがずさんでは、どんなに雰囲気が良くても値打ちは半減しよう。タイトルだけで場違いな棚に放り込まれたとすれば書物は泣いているに違いない。

▼もっとも、ゆくりなく新しい一冊に出合うのも本探しの楽しさだ。お粥のレシピを知るつもりが芥川をひもとく羽目になり、かの芋粥をつくってみたくなる……。そんなことがあってもいい。基本をしっかり押さえたうえで、そういう遊びを仕掛けられるかどうか。一皮二皮むけなければならぬ、TSUTAYA流だろう。

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