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NYタイムズは100万人 課金、スマホが追い風

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

「消滅に向かうかバナー広告 広がる表示拒否ソフト」(本紙2015年10月5日付)で、ネット広告(特に「バナー広告」)の将来について悲観的な動向を取り扱った。インターネット時代のメディアにとって、長らく主流の収入策であったバナー広告だが、広告表示をブロックするソフトウエアが普及し、さらには、スマートフォン(スマホ)大手のアップルが広告非表示機能を推進するという局面に直面している。

広告非表示の動きはメディアにとっては大きな痛手だが、メディア側にも、いつまでもバナー広告に頼ってはいられない事情がある。つい最近、世界最大手の広告代理店である英WPPの代表者で、広告業界の大物マーティン・ソレル氏が、メディアは課金に進むべきだと述べ、衝撃を与えた。

「ペイウォール(新聞社らの購読課金制サイト)が進むべき道だと個人的に確信する。価値あるコンテンツなら、読者は支払うだろう。デジタル広告がもうからなくなってきている事実を直視しなければならない」。広告業界を背負う人物が広告に頼るなと述べるのだから、ことは深刻だ。

デジタル関連広告はモバイルを中心に伸び続けてはいるが、メディアが得る収入は決して十分でない。フェイスブックやグーグルといったメディア本業以外が収入を伸ばしているのだ。

ペイウォールはかねて、その将来は暗いと言われきた。ネットユーザーは課金を極端に嫌い、代替となる無料コンテンツは豊富に存在するからだ。それが、最近明るい兆しが見えてきている。

例えばニューヨーク・タイムズはペイウォールのみの利用者が7月末時点で100万人を突破したと発表した。印刷版とペイウォールを併読する利用者は別に110万人存在し、百数十年にわたる同社の歴史上、最も多くの購読者を擁したと自らを祝った。同紙は最近、20年までにペイウォールを中心にデジタル関連収入を倍増するという戦略を公表した。

またアマゾンの創業者が買収した「ワシントン・ポスト」紙が、全米で数千万人いるといわれるアマゾン・プライム会員を対象に6か月間の無料購読と、以後も通常の購読費の4割程度で購読できるというディスカウントを展開。ニューヨーク・タイムズを追撃中だ。

メディアに近い領域では購読課金に顕著に明るさが見えてきた。定額制音楽配信サービスではスポティファイ、アップルミュージックなどが勢いづいてきている。定額制動画配信サービスでは、日本に上陸したばかりの米ネットフリックスらの好調が伝えられる。

グーグルも、動画共有サイトのユーチューブで広告非表示とする購読課金版の「ユーチューブ・レッド」を発表した(日本では見られない)。アマゾンも同様の動きを見せる。

キーワードはモバイルだ。特にスマホでは、利用者は数多くのサイトから情報を集めるより、少数のサービスを長時間使う傾向にある。課金システムとも連動しやすい。生活に密着した少数のサービスであれば購読課金が受け入れられる可能性が見え隠れする。問題は課金を成功させられるのが「少数」だろう、という点だ。

メディアは将来に向けて広告以外の可能性を見つけつつあるが、同時に中小が大手サービスに吸収されるなどの業界再編の動きも伴おうとしている。

[日経MJ2015年11月2日付]

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