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新幹線が背中押す 北海道産野菜の出荷平準化

収穫の秋、青函トンネルの混雑緩和へ

「2万トンの備蓄倉庫を作る。タマネギだってジャガイモだって置ける」――。北海道食料流通備蓄推進協議会の岸本邦宏会長は道内に巨大貯蔵基地を設ける構想を熱く語る。収穫の秋には農作物を満載した貨物列車の臨時便で青函トンネルが混雑する。道内貯蔵の活用で新幹線がトンネルを通れる時間帯を増やせないか。模索が続いている。

移出時期を変更

倉庫の候補地は美唄市内の工業団地の空き地。岸本氏は美唄商工会議所の会頭を兼ねる。高速道路も近い。市の産品はもちろん、オホーツク方面から「タマネギ列車」などで札幌に集まる秋の恵みを途中の美唄で、雪の冷熱を使って保管する。

道内から貨物列車が本州方面に運ぶ品目のトップはタマネギ、次はジャガイモだ。だが、農産物は「採れ秋」と呼ぶ収穫期に最も多く出荷され、端境期は極端に減る。道産野菜の道外移出量は最大の9月と最小の5月とで実に10倍以上の極端な差が生じている。

道産野菜を道外に届ける日本貨物鉄道(JR貨物)の発送量も9月の29万トン(2014年)に対し5月は13万トン(同)。秋は臨時便を設けるが、春から夏は通常便も空きが増える。道内貯蔵による移出時期の変更は、混雑する秋の青函トンネルの負荷軽減につながり、結果として北海道新幹線が走る余地を広げる。

ホクレン農業協同組合連合会も野菜の貯蔵に取り組む。ジャガイモやタマネギの呼吸を止める特殊な倉庫で貯蔵、端境期の4~7月に販売している。「よくねた」シリーズはジャガイモ、タマネギだけでなく、ニンジンやナシも加えたブランドに成長した。

ホクレンはジャガイモを首都圏近郊で貯蔵している(茨城県常総市の関東野菜センター)

ただ、今のところ物流面での負荷軽減効果は限定的。ホクレンが道外で売る商品の倉庫は関東や九州にあるためだ。石狩市内にも「よくねた」シリーズの倉庫はあるが、主に道内向けの商品を置く。「外気が暖かい時期に出荷するので、すぐ発芽してしまう」(ホクレン農産事業本部)。物流平準化のためにはコンテナへの投資や、さらなる技術革新が必要となる。

品種改良に着手

他の野菜では長期の貯蔵そのものが難しい。秋の物流負荷を高めているニンジンは何カ月も置くと水分が抜けて食味が落ちる。年明けに出荷する「よくねた人参」を7年前に製品化しているが、まだ道内だけのわずかな量の流通にとどまる。

出荷量の偏りを改善するため品種改良にも取り組む。9~10月に収穫し物流が集中するカボチャは貯蔵を前提とする「りょうおもい」を作った。国内産が減り、ニュージーランドなどからの輸入が増える12月以降に出荷できる新品種として、生産を増やしている。

収穫期ではなく需要期にあわせた農産物の出荷は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の大筋合意などで農業を巡る環境が揺れるなか、道が食糧基地の役割を果たし続けるためにも必要だ。新幹線開通による物流の制約という新たな課題にも直面し、試行錯誤は避けて通れなくなっている。

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