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マイリック氏がサンフランシスコで日本酒を造る理由

フィル・キーズ(米ブルーフィールドストラテジーズ アナリスト)

米国では「クラフトブリュワリー(地ビール)」市場に活気がある。業界団体によると、9月28日時点で米国の地ビール醸造所の数は4000を超えているという。こうした状況は大手ビール会社も注目しており、地ビール企業の買収が相次いだ。9月8日にハイネケンがサンフランシスコ地方にあるラグニタス・ブリューイング・カンパニーの株式の5割を取得したことが発表された。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

この地ビールブームを見て、米国において日本酒を普及させるチャンスがあると思っている人がいる。その1人がジェイク・マイリック氏だ。彼はセコイヤ酒蔵の共同設立メンバーだ。セコイヤは15年1月からサンフランシスコで日本酒を醸造している。

「北米にはすでに酒蔵が25近くある。主にビールを醸造した経験を持っている人たちの注目を集めている」とマイリック氏は語る。日本では日本酒の市場規模が縮小しているが、米国ではこれから拡大する可能性が高いという。

セコイヤは現在、1カ月間に600リットルの生酒を製造している。材料はカリフォルニア州で栽培されたカルローズ米、シエラネバダ山脈を水源とするサンフランシスコ市の水道水、麹(こうじ)と酵母だ。それでも価格は安くない。375ミリリットルと750ミリリットルのワイン瓶入りで、価格は最も安いもので18ドル、高いもので36ドルだ。

日本酒の知識がある方ならなぜ生酒を選んだのか不思議かもしれない。生酒は室温で保存ができないので配達から販売までの間、冷蔵させる必要性がある。こうした制約があるため、セコイヤの生酒の販売先は近くのレストランやいくつかの店舗に限られている。

マイリック氏は日本酒を米国で広げるには生酒の方が適していると考えている。米国人も和食と一緒に日本酒を飲むが、和食を食べる回数は多くない。マイリック氏は生酒は和食以外の料理にも合うと主張する。生酒は酸味があるので、複数の味を組み合わせる米国料理と相性がよいという。容器にワイン瓶を選んだのもテーブルの上に置いてもおかしくないからだ。

生酒を選んだもう1つの理由は地ビールが好きな20代と30代の顧客の好みにあっているからだろう。米国ではホップがたっぷり入った「インディア・ペール・エール」というビールが人気を集めている。これは大味で苦みがある。生酒も大味なので若者が気に入ると判断した。

なぜサンフランシスコで酒蔵を設立したのかという質問にマイリック氏はサンフランシスコの特性をあげる。ワインや地ビール、オーガニック食品など、現在の米国の食生活ブームがサンフランシスコから始まったと言われる。サンフランシスコに住む人たちは食べ物に品質の高さを求めている。マイリック氏は「ここで成功すれば、どこでも成功できる」と語る。

以前にマイリック氏が勤務していたIT(情報技術)産業にも関係がある。IT産業が盛んなサンフランシスコには、収入が高く、新しいことへの関心が高い30代の人たちが多く住んでいる。彼らはセコイヤがターゲットにしている人たちと重なっている。

日本やカナダにはセコイヤを応援している日本人の日本酒の職人がいる。酒蔵に採用されいているタンクにはインターネットと接続しているセンサーがついている。醸造中の状況を常にこの職人がモニタリングできる。ちなみに日本の安倍晋三首相がシリコンバレーを訪れたとき、セコイヤの生酒が贈られたそうだ。

[日経産業新聞2015年10月20日付]

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