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動画配信、差異化は困難 見る動機の提案がカギ

(藤元健太郎)

パソコンやスマホなどで月額定額料金を払って見る動画配信サービスがにぎやかだ。9月に米ネットフリックスが日本でサービスを始めたことで、競合各社もプロモーションに力が入っている。

もともと日本は米国と異なり、CATVより地上波テレビの力が強い。レンタルDVDが手軽に利用できる環境も整っており、かねてネットでの動画配信は難しいといわれてきた。だが、スマートフォン(スマホ)と高速大容量の通信環境が普及したことや、ユーチューブなどを見る習慣が増えたことで、状況が劇的に変わりつつある。

中でも通信事業者が動画サービスを非常に低コストで始めたことで、スマホの契約更新タイミングで動画サービスに加入するユーザーが急増。楽天ショウタイムは楽天ポイントとの連携を、U-NEXTはコンテンツ数を強みにプロモーションを展開。米動画配信「Hulu(フールー)」に日本テレビが資本参加して地上波の魅力を発信、動画配信サービスは一気に戦国時代に突入した。

一方、CATVやスカパー、WOWOWは契約者に対してパソコンやタブレットで見るサービスを提供し、顧客流出防止に力を注いでいる。

各社とも魅力的なコンテンツの配信を第一の差別化にしている。日本では動画のほか、漫画コンテンツもみられるようにしている事業者が多いのも特徴だ。

そんな中で参入したアマゾンの「プライム・ビデオ」は衝撃的だった。ネット通販の有料会員は無料で動画配信サービスを利用できるからだ。アマゾンにとっては既存ユーザーの利便性向上や独自端末の利用促進を狙える。何より、動画サービスを通じて顧客が何に興味関心があるのかをデータとして把握できる点が大きい。

そのデータをもとにユーザーのライフスタイルを読み取り、書籍やDVDを含む様々な商品のリコメンド(過去の購入履歴からお薦めの商品を提案する)の精度をさらに高めることができる。

競合他社からすると、通販など別の事業の利益で劇的にコストを下げてサービスを提供するのはずるいと感じるかもしれない。だが、もはや顧客動画配信サービスはその次元の戦いになってきているのだ。

 これだけ動画配信サービスが乱立し、各社とも料金やコンテンツの数、コンテンツの独自性をアピールしていると、もはやユーザーは正直、どのサービスを選べば良いか判断がつかなくなってきている。

コンテンツ数が多すぎて、見たいコンテンツを探すのも一苦労という声もある。各社とも人気ランキングや自分が過去にみた動画からのリコメンドなどを提供して工夫している。だが、それだけでなく、ユーザーに動画を見る意味を提案することが重要になるだろう。

たとえば、江戸時代の勉強をするならこのコンテンツ、週末のパーティーの参考にするならこのコンテンツ、ニューヨークに旅行に行く前に見るならこのコンテンツといった具合に、多様なニーズで検索できるようにする。そのためにはユーザーのレビュー情報や監督やキャスト情報だけでなく、メタデータ(作品の撮影場所や出てくる商品、見るとどんな発見があるかなど)が大切になる。

「このシーンをみたい」という時にすぐジャンプできるサービスもあるといいだろう。ユーザーが一度見た作品でも再編集して別の角度で楽しめるなど、動画コンテンツの新しい価値提案がとても重要になるのではないだろうか。

(D4DR社長)

〔日経MJ2015年10月9日付〕

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