改造内閣は正攻法で経済に当たれ

2015/10/8付
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奇をてらわず、手堅い布陣を選んだ。今回の内閣改造・与党役員人事の印象だ。安保法制の制定が影響して内閣支持率は下落傾向にある。世論受けするサプライズ人事に走りたくなる局面だが、安倍晋三首相は政権の骨格を維持する道を選んだ。今後の政権運営も正攻法で取り組んでもらいたい。

「女性活躍」を掲げつつ、女性閣僚はひとり減った。数だけみると、そんな言い方もできる。詳しく見ると、幅広く目配りした人選であることが読み取れる。

成長戦略なお不十分

9月の自民党総裁選では全派閥が安倍首相の再選を支持した。今回の閣僚の割り振りは、各派の所属議員数をほぼ反映する。恵まれすぎとされてきた岸田派が減り、最大派閥の細田派が増えた。

安倍首相は派閥からの推薦は受け付けなかったが、領袖らと事前に会う機会をもうけるなど彼らの顔が立つ配慮はした。ムラ社会的な自民党に戻った感はあるが、安保で国論を二分したあとだけに、こうした安定感も重要である。

特に閣外に出て非安倍勢力の受け皿を目指すとの臆測のあった石破茂地方創生相の留任は政局混迷の芽を摘む効果がある。

入閣待望組の声に応え、入れ替えた10閣僚のうち9人は新人を起用した。力量不足が心配になるが、文部科学相、農相、行政改革相らはその分野に長年携わってきた人材を選んだ。即戦力としての活躍を期待したい。

改造内閣の最重要課題が経済にあることは言をまたない。安倍首相の経済政策「アベノミクス」の息切れを指摘する声もある。そこで首相は人事に先立ち、新しい3本の矢を打ち出した。

名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やす「強い経済」、出生率を1.8まで高める「子育て支援」、介護離職をゼロにすることなど「安心につながる社会保障」の3つだ。

これまでの3本の矢である金融政策、財政政策、成長戦略は、新3本の矢のうち「強い経済」を掲げる1番目の矢に「集約されている」(麻生太郎副総理・財務相)という。

当初の3本の矢のうち、日銀による異次元の金融緩和という矢は放たれている。過度の円高は是正され、株価も上向いた。企業収益は過去最高水準で推移し、賃金も緩やかに持ち直しつつある。しかし、成長戦略はまだ不十分だ。「強い経済」という矢の一部に役割を落として、取り組みが弱まるようなことはあってはならない。

経済のパイを大きくする発想は正しいが、大事なのはいかにそれを実現するかだ。求められるのは、日銀の金融緩和で時間を買っている間に、日本経済の実力である潜在成長率を高める政策を果断に実行することである。

環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意というチャンスをいかし、規制改革や法人税改革などで日本経済全体の生産性を向上させる努力を加速すべきだ。

新3本の矢のうち、2番目の子育て支援や3番目の社会保障は、財政健全化という目的と整合性のとれた内容でなければならない。

日本の財政は先進国で最悪の状態であり、高齢化の進展で膨らみ続けている医療、年金、介護などにかかる歳出を抑える改革とセットで進める必要がある。

何をする一億総活躍相

たとえば、医療費の自己負担や所得税などでは、高齢者は現役世代に比べ優遇されている。所得や資産にゆとりのある高齢者を対象に、年金などの給付を減らすような制度改革は避けられない。

それに伴って不要となった財源を使い、大胆な子育て支援を展開するといった歳出構造の抜本的な組み替えに踏み込むべきではないか。それならば、新3本の矢にも多少の意味はある。

少子高齢化と経済のグローバル化が進むなか、成長力強化と財政健全化の両立という日本経済の最大の課題を忘れてはならない。

改造内閣では一億総活躍相という新ポストができた。どんな役割を担うのかイメージがわかない。

政権奪回後の安倍政権は「地方創生」など次々とキャッチフレーズを打ち出してきた。言葉遊びとみられては元も子もない。「一億総活躍社会」の具体像を早めに示すべきだ。

先の国会のさなか、自民党の若手の会合でマスコミ批判が出た。自民党は中心人物を役職停止1年に処した。だが、国会が閉幕すると3カ月に短縮した。のどもとすぎればということなのか。自民党に向けられている視線は決して優しくないことを自覚すべきだ。

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