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世界の気候「大転換」の恐れ 温暖化対策、猶予なし

編集委員 安藤淳

世界の気候が大きな転換点(レジームシフト)を迎えつつある――。こんな見方が気象研究者の間で広がってきた。熱帯太平洋で発生中の顕著な「エルニーニョ」現象が引き金となり、過去十数年間に比べ地球温暖化が進む可能性があるという。猛暑や豪雨など「極端気象」の増加をもたらす恐れもあり、さらなる温暖化対策を求める声が強まりそうだ。

エルニーニョは熱帯太平洋東部の海面水温が平年に比べて高くなる現象で、地球全体の気温を押し上げる効果が知られる。日本は夏の天候が不順になり、冬は気温が高めで、普段は晴天が多い太平洋側で雨や雪が降りやすくなる。今夏の西日本の悪天や低温も、エルニーニョ現象が引き金とみられる。

気象庁気候情報課によると現在発生しているエルニーニョは2014年6月ごろに始まり、特に今春以降強まっている。強さは監視海域の水温が平年よりどれだけ高いかで示す。8月は2.2度で、詳しい記録がある1950年以降で8月としては2番目に高かった。もっとも強かったのは97~98年のエルニーニョだ。これ以降は発生しても比較的弱く、熱帯太平洋東部の海水温が逆に低めになるラニーニャが起きやすかった。

工業化以降の過去百数十年間の地球平均気温は温暖化のため上昇しているが、細かく見ると気温の変化は熱帯太平洋の水温に連動する。海洋研究開発機構アプリケーションラボの山形俊男所長によると、エルニーニョが目立つ時期は気温の上昇ペースが速く、ラニーニャ傾向の期間は鈍る。実際、ラニーニャが目立った2000年代は地球平均気温の上昇がほぼ止まったように見え「ハイエイタス」(中断を意味するラテン語)と呼ばれた。米国などで一時、温暖化懐疑論や過度の環境対策への批判が強まったのは、ハイエイタスも一因とされる。

しかし、世界気象機関によると気温は再び上昇傾向がはっきりしてきた。14年の気温と平年との差は0.61度と、これまででもっとも高かった。15年も記録を塗り替えそうだ。5年平均の気温を見ても、11~15年の平均と平年との差は過去最大の水準だ。山形所長は「今後は温暖化が加速する」と予想する。

エルニーニョが現れやすい状態がいつまで続くかは10~20年単位の自然変動で決まるとみられ、将来、再びラニーニャ傾向に転じる可能性はある。それでも、温暖化によって海水温も気温もゲタを履いたような状態になっており、高温化は続くとの見方が多い。

11月30日からパリで開く国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)では、21世紀末までの地球平均気温の上昇を工業化前に比べ2度以内に抑えるための国際合意をめざす。温暖化が加速すれば、対策の先送りの時間的余裕はますますなくなる。

近年、頻発している猛暑や豪雨、暴風などの極端気象も、少なくとも一部は温暖化が原因だとする研究報告が相次いでいる。コンピューターによる再現実験などにより、温暖化の影響で個々の極端気象の発生確率がどう変化するかを計算する「イベント・アトリビューション」の研究が進んだ結果だ。

米気象学会の報告書は13年の日本の記録的な猛暑の分析を掲載。猛暑の発生確率は人間活動による温暖化で大幅に高まったとの見方を紹介した。オーストラリアや韓国の猛暑も温暖化が寄与した可能性が高いという。

今夏も日本や台湾などを台風が襲い、鬼怒川の氾濫では死者も出た。温暖化との関係は詳しい分析が必要だが、気温が上がり大気中の水蒸気量が増えるにつれて極端気象は起きやすくなるとされる。温暖化ガスの実効的な排出削減目標を決めることと合わせて、既にたまった分の影響による極端気象への備えも着実に進めなければならない。

[日経産業新聞2015年10月8日付]

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