TPPテコに世界経済の活性化を

2015/10/6付
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歴史的な成果だ。日米を含む12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が、大筋合意に達した。

12カ国の経済規模は世界の4割弱を占める。世界最大の自由貿易圏をつくる道筋ができた。日本をはじめ各国はこれにあわせて国内の構造改革を進め、経済の活性化につなげるべきだ。

約5年半に及んだ交渉は、先月30日から開いた閣僚会合で実質的に妥結した。交渉が年単位で漂流するおそれもあっただけに、各国が歩み寄った意義は大きい。

貿易・投資の新ルール

最後まで難航したのは、医薬品のデータ保護期間の扱いだ。製薬企業を抱える米国が12年を主張したのに対し、オーストラリアは5年を求めていた。結論として8年で折り合った。

ニュージーランドが求めていた乳製品の市場開放については、日米などが受け入れた。

自動車の関税撤廃ルールでは、一定の割合の部品をTPP域内でつくれば関税撤廃の条件を満たすという「原産地規則」で、日本とメキシコなどが合意した。

通商協定は、各国が互譲の精神で目先の痛みを受け入れ、長い目でより大きな自由貿易の果実を得るようにするのが鉄則だ。今回の決着は全体として均衡のとれた内容といえるのではないか。

TPPの意義は、高い水準の貿易・投資のルールにある。物品の関税撤廃・削減だけでなく、投資、サービス、知的財産権など範囲は多岐にわたる。環境、労働、国有企業といった分野も含む21世紀型の協定といえる。

域内のヒト、カネ、モノ、サービスが自由に行き来しやすくなることで、域内の国内総生産(GDP)を0.9%分、日本のGDPを2%分押し上げる効果があるとの試算もある。

日本企業の利点は大きい。例えば日本からエンジンをマレーシアに輸出し、そこで組み立てた最終製品を米国に輸出する。そんな柔軟な供給網を構築しやすくなる。

サービス業でも日本のコンビニエンスストアがマレーシアやベトナムに進出しやすくなる。日本企業は攻めの経営でさらなるグローバル戦略に打って出るときだ。

農産品の分野では、日本は米国産とオーストラリア産のコメの輸入枠を設けるほか、牛肉や豚肉の関税率を大幅に引き下げる。

日本の消費者にとっては、関税の削減・撤廃により外国産の農産品を今より安く手に入れやすくなる。一方で米国も和牛などにかかる関税を将来撤廃するため、日本からの輸出増加も期待できる。

今後の焦点は国内の農業対策に移る。TPP締結で国内の農林水産物の生産額は3兆円程度減少する、と日本政府は試算している。市場開放の影響を緩和するための一定の対策は必要だ。

しかし、1994年にまとめた関税及び貿易に関する一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド対策では事業費ベースで6兆円超を投じたものの、大半は農業土木に費やされ、農業の体質強化につながらなかったとの指摘は多い。

安易なバラマキは慎み、コメの生産調整(減反)廃止や、農協改革との相乗効果で農業の生産性を高める対策にお金を重点配分すべきだ。

歴史上、TPPは93年に妥結したウルグアイ・ラウンド以来の大きな通商協定となる。

自由貿易圏を広げよ

欧州連合(EU)は米国との間で環大西洋貿易投資協定(TTIP)を交渉している一方で、日本とは経済連携協定(EPA)交渉を始めている。日本はTPP合意をテコに、EUとの交渉妥結を急ぐべきだ。

さらにアジア太平洋経済協力会議(APEC)参加の21カ国・地域が自由貿易圏をつくる構想がある。TPPはその一里塚だ。

TPP、日中インドを含む16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日中韓自由貿易協定(FTA)のすべての交渉に参加しているのは日本だけだ。この地域の自由貿易圏づくりを主導してほしい。

中国をはじめとする新興国経済が減速し、世界経済の下振れリスクが強まっている。そんな時こそ保護主義に対抗し、自由貿易を通じて世界経済を下支えしようとする努力がきわめて重要になる。

大事なのはTPPを経済の変革につなげることだ。企業は競争を通じ収益力を磨き、個人も海外のサービスや人材と触れあい研さんを積む。そんな努力を重ねれば、アジア太平洋地域が世界経済のけん引役であり続けるだろう。

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