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「カプセルタワー」人気再燃 エアビーアンドビー、老朽ビルに光

山田 剛良(日経NETWORK編集長)

JR新橋駅からほど近い、銀座のはずれの一角にそのマンションはある。「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」。ドラム型洗濯機のような「カプセル」を積み重ねた独特の外観をみれば「あれか」と思うだろう。

中銀カプセルタワービルは世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅(東京都中央区)

世界的な建築家、故黒川紀章氏の代表作でもあるこのマンションの保存・活用を巡り、ネットを使った新たな動きが出てきた。きっかけはクラウドファンディングと個人の空き部屋をネットで仲介するサービスだ。

「まずは大成功。何よりカプセルタワーのファンを増やせたのがよかった」と中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表の前田達之さんは笑顔を見せる。

前田さんらは保存運動の一環として、同タワーの写真集の発行を企画した。クラウドファンディングで資金を募ったところ、150万円の募集に対して323人が賛同し、200万円を超える資金調達に成功した。内外のニュースで取りあげられ、カプセルタワーに改めて注目が集まった。

1972年竣工の同タワーは黒川氏の初期の代表作で、交換可能なカプセルに機能を集約するという設計コンセプトは建築史に残る。もともと熱狂的なファンは多く、9カプセルを所有する前田さんもその1人。建築家やカメラマン、大学教授などが購入して住んだりオフィスに使ったりしている。賃貸に出されているカプセルもあるが、月6万円ほどと家賃が手ごろなこともあり、空きが出るとすぐ埋まる。

最近は、米Airbnb(エアビーアンドビー)のネットによる空き部屋のマッチングサービスで人気に火が付いた。管理組合は禁止しているが、1カプセルが1泊9000円で貸し出されている。外国人旅行者などで、来年2月まで全日予約が埋まっている。

実は2007年、老朽化を理由にいったん取り壊しと建て替えが決まっていた。カプセル外装の鉄板がさびて穴があき、多くが雨漏りに悩まされる。配管を交換できないため、全館給湯は既にとまっており、作り付けの風呂は使えない。水道やトイレの利用ができないカプセルもある。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て13年から現職。京都府出身、50歳。

内装に使われているアスベストも問題だ。雨漏りと相まってアスベストが露出し、もはや「人が住めない」状態のカプセルも少なくない。アスベストの除去作業は高い費用が掛かり、全面的な修復は難しいとされる。

それでも、建築エコノミストの森山高至さんはカプセルタワーが「老朽化ビルの再生・活用の新しいモデルになり得る」という。根拠はその収益性の高さだ。

わずか10平方メートルのカプセル1戸が、通常の賃貸でも年間70万円強、1日貸しなら稼働率50%でも年間150万円稼ぐ実力を持つ。

森山さんは「利回りの高さは歴史的建築であるが故。建て替えずに上手に修繕して活用する道を探った方が、圧倒的に資産価値は高まるはず」と話す。黒川氏が当初構想していた「カプセル交換」を現在の技術で実施すれば、今の耐震基準をクリアできる可能性もあるそうだ。

前田さんらは交流サイト(SNS)などを通じたPR活動に加え、カプセルを借りたい人や買いたい人を現在のオーナーとネットで結びつける活動も始めた。ネットを通じた活動が老朽化マンションの未来に新たな光を投げ掛け始めている。

[日経MJ2015年9月21日付]

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