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春秋

逆らいがたい社会の変化のなかで懸命に生きる姿に、読後、人間の偉大さへの感動を覚える。過日、小林秀雄賞に決まった「生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後」(岩波新書)だ。慶応大教授の小熊英二さんが現在89歳の父、謙二さんの半生を聞き書きした。

▼北海道生まれ。早稲田実業を出て、応召し、旧満州(現中国東北部)に駐屯。終戦後はシベリアに抑留され、帰国してからは結核との闘病を経て、何度もの転職をしつつ妻子を養った。「太陽族という言葉も聞いたが関係のない話」「レジャーと言っても土堤で花火を見ただけ」といった逸話に、戦後の生活ぶりがわかる。

▼大戦ほどではないが、今週は21世紀初めの世界や日本の転換点となり得る出来事が相次ぐ。1つは米連邦公開市場委員会(FOMC)。2008年末からのゼロ金利の解除となるか。株価や新興国通貨への影響も取り沙汰される。もう1つは安保関連法案の参院での行方だ。一定要件の下で集団的自衛権の行使に道を開く。

▼双方、国や人々の運命を大きく変える可能性があるだけに、多くの負託に応えた、熟慮の上での判断を待つほかない。とはいえ、結末いかんに関わらず、やがて、思わぬ荒波に世がもまれるのは歴史の常。謙二さんは、人生の苦しい局面で最も大事なことについて、答えた。「希望だ。それがあれば、人間は生きていける」

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