難民を生む中東の混乱解消に全力尽くせ

2015/9/16付
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欧州連合(EU)は急増する難民や移民への対応策を話し合う内務・法務相理事会を開いた。加盟国に難民受け入れの分担を義務付ける案については東欧諸国などの反発が強く、結論を先送りした。

押し寄せる難民への対処は一刻を争う。欧州の結束が問われている。だが、問題の解決には彼らがなぜ、国を離れて新天地を目指すのか、問題の根に目を向ける必要がある。国際社会は多数の難民を生む中東の混乱解消にも全力を尽くさねばならない。

難民が中東やアフリカから欧州に向かうルートは主に2つある。1つは北アフリカから地中海を越えイタリアなどに渡るルートだ。もう1つはトルコやギリシャを経てバルカン半島を北上する。

いずれのルートも難民急増の原因は、2011年に中東で始まった民主化要求運動「アラブの春」にさかのぼる。エジプトやリビアで独裁政権が相次いで崩壊したが、その後の民主化の歩みは遅く、むしろ治安は悪化している。

なかでも内戦が泥沼化しているシリアの人々の絶望は深い。内戦が始まって4年半で400万人が国を離れ、760万人が国内で避難民となった。シリアの人口は2200万人だ。国民の半数が故郷を追われる異常事態である。

シリアでは政府軍、反政府勢力、イスラム過激派が入り乱れて国土を奪い合い、収拾のめどが立たない。いつかは国に戻る。そう考えて周辺国にとどまっていた難民も帰還に見切りをつけ、安全な地を求めて欧州に向かっている。欧州が直面する難民流入は内戦収拾に効果的な手を打てず、放置してきたつけとも言える。

米国は過激派組織「イスラム国(IS)」へ空爆を続けている。難民の急増を受けて英国もシリア領内での空爆に加わり、フランスも参加の意向を示している。一方、ロシアがアサド政権への軍事支援を強めているとの情報もある。

ISのような無法集団へは武力行使もやむをえない。だが、軍事行動だけでは問題の解決にはならない。あわせて内戦の政治的な決着を探ることが重要だ。シリアの全勢力と主要国が参加する対話の実現に国際社会は尽力すべきだ。

日本もこの点で役割を果たす必要がある。ヨルダンやトルコなどシリア周辺国の難民受け入れも限界にある。人道・経済支援に積極的に加わり、中東の安定に貢献していくことが欠かせない。

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