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選手に芽生えた自主性 指揮官、W杯後退任へ
(挑戦 ラグビー日本・下) リーチ主将ら練習提案

2015/9/11 3:30
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エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)は、日本のラグビーにとって良薬であり劇薬だった。前任者2人も外国人だったが、もたらした衝撃は全く違う。2012年の就任からの4年間、選手はその教えに従い、ときには反発もしながら成長してきた。

練習で走り込む五郎丸(右から2人目)=共同

ジョーンズHCは1年目、選手を徹底的に走らせ、体のぜい肉をそぎ落とした。2年目からは筋力トレーニングを強化。普通は練習量を落とす試合直前まで行い、各選手が筋肉を数キロ増やした。就任後の好成績のベースは肉体改造にあった。「勝つために選手に求められる考え方、練習量のスタンダードを変えてくれた」とリーチ・マイケル主将(東芝)は話す。

改革は選手の内面まで及ぶ。今春にはポジション別のリーダー5人程度が主催する試合前のミーティングを導入。各人は担当分野での注意点を考え、映像とともに説明する。「過去のW杯での日本は選手の自主性があまりにも欠けていた」とHCはきっぱり言う。

日本のラグビー界の構造まで変えようとした。南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」に参戦する日本人が増えた一因は、HCが母国オーストラリアの協会に設けさせたといわれる日本人枠の存在だ。若手が人気のある大学ラグビーに進み、トップレベルのプレーを経験できない日本の環境も厳しく批判する。

その言葉は時に必要以上に厳しいものと周囲に映り、摩擦を生んだ。日豪の文化の違いとは言い切れない。選手、スタッフとの衝突は01~05年の豪州代表監督時代にも起きている。

指揮官は先月25日にW杯後の退任を発表。南アフリカのクラブへの転身が確実視される。ほぼ同時にチーム内では変化が生まれた。練習中、味方のミスへの叱責が減少。好プレーを褒めるリーダー陣の声が増えた。

提案したのは副将の五郎丸歩(ヤマハ発動機)。同様に危機感を抱いていたリーチ主将が受け入れた。「練習でエディーが『ミスをするな』と言い過ぎて雰囲気が悪くなっていた。若い選手に怒ってプレッシャーを掛け、その選手がミスをしまくることもあった。それを助けてあげられなかった」とリーチは話す。

ぬるま湯を求めたのではなく、HCの"過熱"を適正温度に下げる作業。選手の主体的な働きかけは今年、増えた。リーチ主将や田中史朗(パナソニック)らは、日本の弱点ながら準備が手薄だった密集戦の練習を増やすよう、度々提案。一部は採用された。

HCの求心力が失われたわけではない。その献身と博識には誰もが一目置く。「日本のラグビーを変えるために体調が崩れる(13年に脳梗塞を発症)くらい毎日、真剣に考えた人。気持ちよく送り出したい」(リーチ主将)との思いもある。

4年間、敬愛と畏怖の対象だったジョーンズHCからの親離れ。恐らく選手の"自立"は、HCの予想を上回る速度で進行した。ピッチ外の指揮官の指示を待たず、選手自身が自主的に判断する。W杯の試合で必要なことである。

この連載は谷口誠が担当しました。

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