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ウェブ接客「脱・自販機」 個別分析、実店舗に迫る

(藤元健太郎)

これまでの電子商取引(EC)サイトはせっかく訪れた顧客に対して自動販売機と同じだった。つまり顧客は自ら欲しい商品を選んで購入ボタンを押すのだが、店頭の接客のように背中を押してくれることはない。そのため欲しい商品が見つからなかったり、迷ったら買わないで去ったりする人も多い。

もちろん、その課題を解決するための工夫も実施されてきた。顧客の反応がよい商品画像や広告クリエイティブをリアルタイムで分析して効果が高いものにどんどん変えていくツールなども多数出ている。1人ひとりの顧客にパーソナライズするワン・ツー・ワンも長年、様々な企業が挑戦している。だが、顧客ごとに画面表示を変える設定やシステム構築などが大変なため、利用者の過去の閲覧・購買履歴からお薦めの商品やサービスを提案する「リコメンドエンジン」の活用にとどまっているのが実情だ。

しかし、ここ最近、ウェブサイトに訪れた人の行動パターンを解析して適切なコンテンツを表示するツールが登場してきた。1つは、ITベンチャーのプレイド(東京・渋谷)が提供する「KARTE(カルテ)」だ。

長い時間カートに商品を入れたままだったり特定のブランドの商品ばかり見たり、顧客1人ひとりの行動をリアルタイムで解析し、画面上に適切なメッセージを出す。例えば、セレクトショップのベイクルーズグループが運営するウェブサイト「スタイルクルーズ」において、購入金額が一定になるとノベルティーをプレゼントするキャンペーンを実施した時。カート内の商品の合計金額が下回る場合のみ、「1万5000円(税込)以上ご購入の方にプレゼント」というバナーを表示したところ、昨年よりも売り上げが69%上回ったという。

割引などのメッセージ表示だけでなく、チャットやアンケート画面を表示することも可能だ。売り場を探して迷っているような行動をしている顧客にはチャットでさりげなく「お困りですか?」と表示する。

同社の倉橋健太最高経営責任者は「ログ分析などと異なり、カルテでは、顧客1人ひとりがウェブサイトの店舗内でどのような行動をしているかが管理画面で簡単に見ることができる」と語る。

もう1つは、Emotion Intelligence(東京・渋谷)が提供している「ZenClerk(ゼンクラーク」。顧客のマウスやスマートフォン(スマホ)でのタッチの動きを1秒間に30回解析し、「新規でかつ迷っている顧客」のみを抽出する。商品を買おうかどうか迷っている人に割引を提案するなど、効率的に最後の一押しができる。

こうした「ウェブ接客」ツールが相次いで登場している背景には、スマホ時代になり、顧客の画面にメッセージをポップアップ表示するとダイレクトに効果をあげることができる状況になったことがある。しかも、タグを埋め込みクラウド側で処理をするため企業は特段システム的な改良を必要としない。この2つのサービスは導入企業が急速に増えている。

リアルな店頭でスマホを使う人も増えている。これまで店員に声をかけられるのが苦手だった人でも、スマホから「お困りですか?」とさりげなく声をかけられるなら抵抗感は薄れそうだ。「あなただけの割引ですよ」と提示されて、隣の人とは違う価格で購入することもできるようになるかもしれない。

(D4DR社長)

〔日経MJ2015年9月11日付〕

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