配達員の不足を物流高度化の好機に
宅配便など、家庭や事務所向けの小口配達が人手不足という課題に直面している。物流網の末端がスムーズに機能しなくなれば生活やビジネスに支障をきたす。情報技術の活用や新しい受け取り方法の考案などで、高度な物流サービスの開発につなげたい。
ネット通販の成長などで、宅配便の取扱個数は15年間で約2倍に増えた。スーパーやコンビニ、外食業の宅配も伸びている。しかし高齢ドライバーの引退や若者の車離れなどで配達の担い手は不足しつつある。自転車や手押し車の導入により免許を持たない主婦などの活用も進むが、限界がある。
身近な小売店が消える中、外出が難しい独居老人や働く女性の増加で家庭向け配達の重要性は今後も高まる。起業家の多くにも宅配便は不可欠なインフラだ。人手不足を放置し、配送費の上昇やサービスの縮小を招くような事態は避けるべきだ。
国土交通省が先月まとめた試算によれば、宅配便を配達する車の走行距離の25%は、不在による再配達のためのものだ。例えば、ネット通販で注文時に配達日時を指定したり、帰宅時間をスマートフォンなどから簡単に変更したりできるようになれば、配達員の無駄足を減らせる。
消費者自身の「受け取り」への参加も促したい。コンビニで受け取れる荷物を今より広げたり、通勤の駅に受け取り窓口を設けるなどの案が考えられる。配達員に自宅に入ってほしくない人も多い。通販、小売り、物流、鉄道など関連業界の連携が望まれる。
集合住宅などの1階に宅配便の受け取り用ロッカーを設けるケースも増えている。もう少し安価で手軽なロッカーを開発し、既存のマンションや戸建て住宅への普及を進めてはどうか。地区の集会所などに設置すれば、地域住民の交流にもつながる。
セブン&アイ・ホールディングスとファーストリテイリングが、ネット通販品のコンビニでの受け取りなどをテーマに提携交渉を始めた。荷物の受け取り方法の多様化と高度化は、経営戦略の柱の1つになりつつある。スーパーがネット通販用の倉庫を新設するなど物流投資も盛んになってきた。
人手をかけずコストを削減し、消費者の満足も向上させる。現在の物流・情報技術を生かせば十分可能だ。高度な物流サービスはアジアなどでの展開も期待できる。