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世界で進む脱石炭の流れ 日本に警鐘「孤立招く」

日本総合研究所理事 足達英一郎

今年5月、英国の有力シンクタンクから、日本の温暖化ガス抑制策と海外の石炭火力発電プロジェクト推進に対して「国際的な孤立を招く」と警鐘を鳴らす報告書が発表された。

「日本の立場は国益の客観的分析とは合致しないように見える」「責任を放棄することは日本を孤立させ、UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)のみならず他の多国間フォーラムにおいても、日本の外交官にとって厳しい状況を作り出すことになる」という記述は刺激的だ。

日本の経済産業省と産業界のこれまでの主張は「我が国が開発を進めている次世代高効率石炭火力や二酸化炭素(CO2)の分離・回収・利用技術を早期に実用化し、国内外、とりわけ非経済協力開発機構(OECD)諸国における普及拡大を加速することが気候変動対策の観点から極めて効果的」というものだ。

しかし、次世代型の石炭ガス化複合発電や石炭ガス化燃料電池複合発電の技術革新が進んだとしても、CO2排出原単位(電力量あたりの排出量)は1キロワット時あたり約530グラムどまり。液化天然ガス(LNG)コンバインド発電の同約375グラムに及ばない点が、脱石炭を迫る側の大きな根拠になっている。

世界第4位の石炭産出大国オーストラリアでも、石炭輸出からの脱却を図るべきだという意見が出ている。6月に環境非政府組織(NGO)が公表した報告書では同国の化石燃料プロジェクトや関連企業への2008~14年の融資総額のうち26%は同国四大商業銀行によるが、20%は日本の金融機関によることも指摘している。

7月末、インドネシア初の超々臨界圧石炭火力という次世代型の発電所建設が、OECD多国籍企業行動指針に従っていないとして問題提起の対象になったことが伝えられた。

この事業を推進する現地法人は日本企業2社からあわせて66%の出資を受けて設立されているため、申立書は日本の「連絡窓口」(外務省、厚生労働省、経産省で構成)に送付された。

申立書によると、主として周辺住民に対するネガティブな影響を指摘しているが、国境を越えた環境問題の輸出と気候変動への影響も、問題提起の論拠のひとつとして掲げられている。

また、日本を名指しで批判したものではないが、ノルウェー議会は5月に政府年金基金に関して石炭関連投資資金の引き揚げを決議した。この年金基金は世界で2番目の規模を持つため国際的な関心が集まった。

現時点で資金引き揚げの対象は上場株式だが、将来、仮に国債にも及べば、日本が低い評価を受ける可能性は否定できない。

日本国内では8月末、環境相が環境影響評価法に基づき、千葉県袖ケ浦市の石炭火力発電所建設計画に対し「現時点では是認できない」とする意見書を経産省に提出した。反対表明は3カ所目だった。

「政府の温暖化ガス削減目標の達成と整合性が担保されない」という懸念とともに、世界の厳しい視線が注がれるなか、警鐘を鳴らす意図もあったのではないかと想像する。

何が国益かを判断するのは容易ではないが、石炭火力発電を今後も推し進めるのなら、少なくとも圧倒的な理論武装が追加的に必要なことは間違いない。

[日経産業新聞2015年9月10日付]

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