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和菓子、30代男性取り込む 船橋屋、SNSで通販拡大

「くず餅」の老舗、船橋屋(東京・江東)が交流サイト(SNS)を活用した販促で顧客層の若年化を進めている。フェイスブックを活用してファン同士の交流を促したり影響力のある著名人のイベントに出向いてくず餅を食べてもらい発信してもらうなどした。店舗に足を運ぶのは50歳以上の女性が多いが、通販では30歳以上の男性が中心となり売り上げを伸ばしている。

SNSで通販し、店舗の売り上げを伸ばす

船橋屋は江戸時代に創業し210年目を迎えた老舗和菓子店。看板商品は秘伝の黒蜜ときなこをかけて食べるくず餅で、1人前9切れの商品が年間500万食ほど売れている。店舗に足を運ぶのは50歳以上の中高年女性が多いが、SNSを活用してからは、通販の主な購入者は30歳以上の男性になった。

船橋屋のくず餅は、小麦に水と塩を加えて練ってできる小麦でんぷんを450日間、乳酸発酵させて作る。添加物を入れないため賞味期限は2日間。通販で北海道や九州へは航空便で送る必要がある。

創業以来製法と味を変えず、長年の根強いファンに支えられてきた。だが、地味なイメージから「くず餅=中高年向けのお菓子」と見られがちで、若い世代になかなか浸透しなかった。これを打破しようと、2012年からフェイスブックを活用することにした。

フェイスブックでは同社の社員による発信だけでなく、客同士の口コミで情報が広まる。夏はかき氷が目玉商品で、食べた人が写真付きで投稿した。かき氷は通販で取り扱えないため、投稿した写真を見た人が食べたさに、店舗に足を運ぶ動機にもなった。

また今では「札幌の物産展は〇〇に開かれる」など、イベント情報も自社ホームページを経由せずに消費者発で広まるようになったという。

さらに閲覧数を増やそうと、影響力のある著名人のイベントに趣き、くず餅を食べて気に入ったら発信してもらうなどして広めていった。

フェイスブックを始めた初期は月に1000人が閲覧すればよい方だった。それが、最新の船橋屋のリーチ数(投稿を見たユーザー数、6月末時点)は17万8000。「いいね!」を押すなど反応した口コミ数は、2万件以上にのぼる。企画本部経営戦略企画室の佐藤恭子室長は「和菓子メーカーや他の老舗で、SNSで2万件の口コミはまずないだろう」と話す。

実は、くず餅とSNSとの相性は良い。フェイスブックをチェックするのは主に30~40歳の男性だ。くず餅を好む世代を親に持つため、SNSを見て「母親が好きな和菓子だ」と贈り物に選ぶようになった。もともと「食品の通販はビジネスパーソンの利用が多い」(佐藤氏)こともプラスに働いた。

SNSの効果は数字にも表れている。SNSに本腰を入れ始めた12年度の通販の売上高は前年度に比べて約15%増えた。通販事業の拡大は全体の売り上げ増にもつながり、14年度は前年度比で8%上がった。

さらに30~40歳の購入者に子どもがいれば、幼い頃から食べてきた「懐かしい味」として、将来的なファンづくりも期待できる。次に狙うのはSNSでの10~20歳代への認知の拡大だ。流行に敏感な世代に、200年以上続くくず餅の味が受け入れられるか見ものだ。(夏目祐介)

[日経MJ2015年9月9日付]

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