2019年6月20日(木)

中国人の爆買い SNSで先読み
石黒不二代 ネットイヤーグループ社長

2015/9/8 12:00
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爆買い(中国人観光客による大量の買い物)に関する問い合わせが多くなっている。中国の春節(旧正月)に日本を訪れた中国人による飲食・流通の売り上げは1140億円だった。中国に進出していなくても、訪日中国人の消費動向を無視できなくなっている。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

POS(販売時点情報管理)データを分析しても爆買いは起きない。中国人が何を買うのかは、旅行前に得る情報によって決まるからだ。

少し前に「日本で買うべき神薬(優れた薬)12選」という趣旨の中国語が中国のソーシャルネットワークサービス(SNS)で盛んに発信されていた。この後、参天製薬の目薬など、神薬12選に選ばれていた医薬品がまさに爆発的に売れた。

中国のSNSには日本で実際に商品を購入した「体験談」が投稿されている、日本への旅行を計画している中国人は、これらの意見を参考に日本で買うものをリストアップする。これが繰り返されることで一つの商品が爆買いの定番になる。

こうしたメカニズムを知り、売るための仕掛けをつくるには、SNSの書き込みの分析が必要だ。訪日中国人の消費情報に関するリポート「中国トレンドExpress」がある。私はこれを参考にし、リポートを発行しているホットリンクに分析を依頼した。そして中国の検索サービスやSNS大手企業を訪問し、その実態を学んだ。

訪日前の情報収集に利用されるのは「百度(バイドゥ)」などの検索エンジン、「微信(ウィーチャット)」などのメッセンジャーアプリ、中国版ツィッターの「微博(ウェイボ)」などだ。

神薬12選に選ばれる医薬品の種類は変わり続けている。書き込みが多い地域のトップ3は東京、北海道、京都でほぼ不動だが、それ以下ではSNSで話題になった地域の順位が容易に上がることもわかった。

化粧品では、スキンケア系の商品がよく書き込みの対象になる。ブランドランキングでは、日本人の好みとは異なる内容になりがちだ。「MUJI」などは食品を中国で販売していないので、来日時の購買人気が高くなっている。

SNSで話題になればそのまま爆買いが起きるわけではない。中国でマーケティング支援を行っている普千商務諮訊の宮田将士氏によれば(1)日本で人気がある(2)中国人の間で知名度が高い(3)定番商品になる(4)身近な人から薦められる――などの条件が爆買いの発生に必要であるという。

爆買いのメカニズムは何だろう。それはメンツという中国人の行動指針だ。中国人は必ず事前に家族や友人に日本に旅行に行くことを話す。これは自身の経済力の自慢であり、自身のメンツをたてる行為だ。

しかし、それは嫉妬も引き起こしかねない。そこで相手のメンツも立てる。それはお土産という形で表現される。買い物リストには家族や友人や同僚へのお土産が多く記載されていく。

日本でしか売られていない、安全である、容量が小さい。こうした特徴を持つ商品はこのメンツを立てるのに最適な買い物なのだ。

店舗での売り上げを分析するだけでなく、中国でのSNSのデータを分析する。中国人が求めるものがわかれば商品を企画する。中国のSNSには企業アカウントを作ることもできる。インフルエンサー(影響力のある発信者)を探し出しマーケティングを手伝ってもらうことも可能だ。

中国人相手でも不変のマーケティングの基本もある。店舗での接待が口コミに大きな影響を与えることがわかっている。

消費は作るもの。それには顧客をよく知らなければならない。それをまず覚えておきたい。次回は中国人の帰国後の消費について書こうと思う。

[日経産業新聞2015年9月3日付]

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