戦後70年の視角 資本主義を鍛え世界に変革の姿を

2015/8/30 3:30
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戦後70年という節目に、数百年という単位で世界の歴史を振り返ると、現在の立ち位置と未来へのヒントが見えてくる。

英国の経済史家、アンガス・マディソンの推計では、紀元後1年時点の世界最大の経済大国はインド、中国がそれに続いた。

中印両国の経済規模は、ローマ帝国時代のイタリアをも大きく上回っていた。

アジアの時代の再来

英国で起きた産業革命を経て、19世紀から20世紀にかけて世界経済の重心は欧州と米国に移った。そして我々がいま目にしているのは、アジアの時代への回帰だ。

アジアでは戦後、日本の高度成長を皮切りに、韓国、台湾、シンガポール、その後は東南アジア諸国が後を追うように雁行(がんこう)型の経済発展を遂げた。

2001年の世界貿易機関(WTO)加盟を機に中国は世界経済に本格的に統合され、日本を抜いて第2の経済大国に躍り出た。戦後70年は、アジアの時代再来の序章だったといえる。

アジア開発銀行(ADB)によれば、50年にはアジア全体の経済規模が世界の過半を占めるようになる。

経済史家のカール・ポランニーによれば、19世紀文明は、力の均衡の政治、金本位制、自由主義国家、市場経済の4つの制度に特徴づけられるという。

20世紀は米国を中心としたドル本位制、WTO、自由民主主義国家、市場経済を軸とした世界システムに移った。では21世紀はどこへ向かうのか。政策研究大学院大学の白石隆学長は中国の台頭などを背景にした「富と力の急激な変化」が起きると予測する。

いま中国経済は、高度成長から安定成長へと軟着陸するための試練に直面している。世界同時株安の引き金となるほど影響力を増した中国は、改革を通じ世界経済の安定に貢献しなくてはならない。

政治面からみたアジアは、海洋進出を強める中国と、今なお最大の大国である米国がせめぎ合う前線でもある。

日本は米国との堅固な同盟関係を維持しつつ、中国とは経済分野の協力を深め、この地域の安定の要になれるかの存在意義が問われている。

モノ、サービス、カネ、ヒトが世界的規模で行き来するグローバル化がこれまで以上に進むことも、21世紀の潮流だ。

曲折はあろうが、長い目で見ればアジア太平洋地域はその中心舞台だ。日本の役割は地域の経済統合を主導することだ。

環太平洋経済連携協定(TPP)と、日中韓など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を実現する具体的な道筋を探るときだ。

IT(情報技術)化も加速し、自動運転車といった革新的な製品の登場が相次ぐだろう。

金融とITが融合したフィンテック。自動車や自宅といった時間や空間を共有する経済。こうした米国発の新サービスが瞬く間に世界中で広がっているのも、ネットの普及があればこそだ。

「課題解決先進国」へ

あらゆるモノをネットにつなぐ時代にあって、ドイツや米国は製造業の主導権づくりでしのぎを削っている。日本勢も世界的競争の中で躍進する努力を急ぐべきだ。

人口減少に直面する日本経済にとって、ロボットや人工知能(AI)は大きな可能性を秘める。人間の雇用を奪うという悲観論にくみせず、賢く活用することで経済の生産性を高めたい。

再びアジアに目を向ければ、低い出生率に苦しむ韓国、シンガポール、タイなどで日本を追いかけるように少子高齢化という難題に直面していく。欧州も同様だ。

若者も、高齢者も、女性も、外国人材も仕事、子育て、地域生活にかかわっていくような全員参加型の社会が実現できれば、日本は「課題解決先進国」として世界に1つのモデルを示せるだろう。

そのためにも日本は自らの宿題を片づけることが大事だ。先進国で最悪の財政を再建し、社会保障制度を再構築すべきだ。企業も競争力を高める余地はなお大きい。

進化する資本主義と世界に日本がどうかかわるか。国も、企業も、個人も内向き思考から決別し、たゆまぬ変革に挑戦して未来を切り開こう。

(おわり)

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