2019年7月20日(土)

生活家電系IoT、フランス企業に勢い
林 信行(ITジャーナリスト/コンサルタント)

2015/8/28 12:00
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パソコン1台あれば、世界中に商品やサービスを展開できる汎用ソフトウエア開発のビジネスはいまだにIT業界の花形だ。しかし、デジタル技術に携わっている人たちの間では、新世代のハードの開発についてのニュースにも注目が集まっている。例えばネット接続する自動車や農機具、生活家電などを含む「モノのインターネット(IoT、インターネット・オブ・シングス)」と呼ばれるものだ。

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

実ブランドや実店舗と連動したファッション系のサービスといったように、特定の企業や課題に直接リンクした専用ソリューションも目立つようになってきた。特にファッション業界では、最近デジタル技術を製造や流通、マーケティングに活用する動きが盛んだ。

7月に東京で開かれた「DECODED Fashion(デコーデッド・ファッション)」。ファッションとテクノロジーに関するこのイベントでは、3万~7万円の入場チケットがすぐに売り切れるほどの活況だった。このイベントのため、ゲストが大勢日本を訪れた。面白いのは、その多くが英国のロンドンとその周辺の企業に属していることだ。

IoT開発に目を向けると、企業の数は確かに米サンフランシスコの企業が圧倒的に多い。だが、実際に注目を集める商品やサービスを生み出しているのはパリにある企業だったりする。世界最大規模の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」では、ホビー用ドローンブームの火付け役として知られるParrot社、家庭用の環境センサーで有名なNetatmo社、スマートフォン連動の健康器具のWithings社などが強い存在感を放っていた。これらの企業はパリやその近郊に本拠地を置くフランス企業だ。

これは筆者の推測だが、生活家電系のIoTにおいては、日々の暮らしを大事にするフランス人の気質が合っているのではないか。家の中に置いたり、身につけたりする製品では美しさが大事だ。このあたりの感覚は米国人よりもフランスの企業や消費者が圧倒的に鋭敏というのも理由の1つかもしれない。

もう1つ面白いのは、フランスを代表する世界的工業デザイナーのフィリップ・スタルク氏がこうした新興企業の多くに関わっていることだ。その裏に見え隠れするのが「France Design」のブランドの下での国を挙げてのデザイン振興活動だ。世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク(通称:ミラノサローネ)」の期間中にも「VIA(France Design)」という特設展示場が毎年開設されている。

今、ITは電気や水道と同じくらいに当たり前の存在だ。農林水産業や医療、ファッション、教育といったITとは縁遠そうに見える業界でもごく普通に使われ始めている。「実」と結びついたソリューションに大きな注目が集まりつつある。こうしたビジネスは長い目で見れば人々の生活に大きなインパクトを与える。

IT活用の焦点は、非ITの業界がITによって今より洗練された姿になることにある。ここではそれを「21世紀化」と呼ぶ。シリコンバレーやサンフランシスコをはじめとするベイエリアでは、現在、交通と流通という2つの業界で21世紀化への新たな挑戦が始まっている。

こんな時代に東京はどんな分野で世界をリードできるのか。我々に今、突きつけられた大きな課題だ。

[日経産業新聞2015年8月25日付]

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