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拙速は避けたい「ゲノム編集」

DNAの遺伝情報を望み通りに書き換える「ゲノム編集」と呼ぶ新技術が、世界の科学者の間で議論を呼んでいる。安全性や生命倫理上の課題について十分な検証や合意がないまま、遺伝病の治療などに応用されかねない心配があるからだ。

受精卵などの遺伝情報を書き換えれば、遺伝病を治せる可能性はある。しかし現時点では治療手段として、どこまで有効なのか確かめられていない。子や孫の世代に望ましくない影響が及ぶ恐れも払拭しきれない。親の希望通りの外見や能力をもたせた子ども(デザイナーベビー)の誕生に応用される懸念もある。

日米の遺伝子細胞治療学会は8月初め、新技術を受精卵や生殖細胞などに使うことに反対する共同声明を発表した。

この声明に賛同したい。生命科学の技術進歩は急速だ。次々に登場する新技術は私たちが健康に生きるのに有用な情報を知り、難病を克服するのに役立つ。だが技術進歩に社会の仕組みが追いつかず振り回される面もある。時折、立ち止まって考えることが大事だ。

事の起こりは中国の研究者が4月に人間の受精卵の遺伝情報をゲノム編集で改変することに成功したと発表したことにある。拙速な応用に対する懸念が世界で広がり、米政府が「こえてはいけない一線」と科学者に自制を求める声明を出した。日本政府も対応を議論し始めた。

ゲノム編集は生物学の基礎研究では便利な道具である。米国ではエイズ患者を対象にした臨床試験が始まり発症防止に効果をあげているという。技術を全面的に否定するのは賢明でない。

とりあえず生殖細胞などへの応用について関係学会や研究機関が国際的なモラトリアム(一時中止)を決める必要がある。そのうえで、この技術がもたらす影響を一般の人々にもわかりやすく説明し、どんな条件下なら研究が許されるのか、合意形成のための幅広い議論を進めてもらいたい。

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