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春秋

皇居の宮殿に「石橋(しゃっきょう)の間」がある。広さ245平方メートル。中央の壁に前田青邨が同名の能をモチーフに描いた絵が3枚掛かることから名をとった。ここで、1975年10月31日、昭和天皇が記者会見に臨まれた。初めての米国へのご訪問を終えて、感想を述べられたのだ。

▼関連で、長い在位中うれしかったことを聞かれ「終戦後、国民が努力して日本の復興ができたこと」を挙げられた。このときから、さらに40年続いてきたこの国の「戦後」。天災や大事故、経済的ショックに阻まれながら、平和を追い求めずして豊かさや幸せは来ない、という価値観を、世界へ証し続けた歴史でもあろう。

▼能「石橋」は後半の獅子の乱舞が歌舞伎などの材としても有名だが、前半では、理想へと踏み出す選択や決断のあり方をも問うている気がする。寂昭法師が、文殊菩薩(ぼさつ)の住む浄土へかかる橋のたもとに至る。現れたのは謎の童子。悟りを前に気がせく法師に童子は「橋は幅一尺。下は地獄ほど深い」と何度も危うさを説く。

▼昨日、全国戦没者追悼式で天皇陛下は、我が国の平和と繁栄は「平和の存続を切望する国民の意識に支えられた」との趣旨のお言葉を述べられた。大きな犠牲の上に、悲壮な思いで踏み出した70年前の一歩。重い選択、苦い決断を積んでたどり着いた今の足元を見定め、「戦後」の灯を絶やさずに未来への橋を目指したい。

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