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IT人材育成に本腰 「ユニクロ」提携戦略の先

(藤元健太郎)

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがセブン&アイ・ホールディングスと包括的な業務提携についての検討を始めた。具体的な内容はまだ公表されておらず検討だけで話題になるのは、勝ち組の2社ということだけでなく、提携の内容がインターネット通販と実店舗をつなぐオムニチャネル戦略絡みであると推測されているからだ。

ファストリの柳井会長兼社長(左)とアクセンチュアのジャンフランコ氏(写真は共同事業の発表会見)

オムニチャネルの実現には店頭と電子商取引(EC)の在庫管理の一元化など情報システムとロジスティックへの大規模な投資が伴う。オムニチャネル投資で先頭を走る両社が企業を越えたプラットフォームを構築すれば、他社との圧倒的な差がさらに広がるだろう。

このところのファーストリテイリングの他社との提携の動きは激しい。大和ハウス工業とは有明(東京・江東)を皮切りに全国10カ所程度に物流センターを構築するための新会社を設立した。さらに、アクセンチュアとは情報技術(IT)分野の合弁会社を年内に設立し、ビッグデータ解析やITの新サービスを開発すると発表した。

アクセンチュアとの動きからはアパレル企業としての人材の限界を感じているように思える。顧客の行動データを分析して商品の生産計画や在庫管理、価格、顧客へのプロモーションをマーケティングオートメーション(興味や関心が異なる顧客一人ひとりとのコミュニケーションを自動化するための仕組み)も活用しながらあらゆる販売チャネルで実現する。バリューチェーン(事業活動を分析し、どの部分で付加価値が生み出されているかを把握し、戦略の方向を探ること)を構築する――。こうしたことができる人材を、育成し始めたのではないだろうか。

ITベンダーでも、大手ITベンチャーでもなく、コンサルティング世界大手のアクセンチュアと組んだことに、グローバルビジネスの再構築をにらんだ動きであることを感じさせる。

これまでファーストリテイリングは東レと組んで高機能素材を使ってコストパフォーマンスの良い商品を開発し、揺るぎない地位を確立してきた。だが、もはや競争の源泉が良い商品を作って店舗数を増やしていくだけではないことに気づいているのだろう。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

オムニチャネルの理想型は「あらゆる顧客の今のニーズをリアルタイムに把握して、可能な限り短期間で製造し、世界中のあらゆる販売チャネルで必要な時に入手できるようにする」ことだ。

だが、この理想型をまだ達成していない。実際、筆者がユニクロで買い物をする際にも、欲しい時に欲しい商品のサイズや色柄は店頭でもECでも売り切れていることが多い。

ソフトバンクの社外取締役も務めているファストリの会長兼社長の柳井正氏には、ITが変えていくこの先の社会が見えているのだろう。これまでもアパレルの常識を次々と壊してきた柳井正氏だが、製造小売り(SPA)業態から進化し、次のステージに向けて本気になってきたことがうかがえる。

世界の競合であるZARAやH&Mとのグローバルな戦いを同じ土俵で戦うのではなく、アパレルの枠を超えた企業へと転換して違う業態として越えようとしていると考えていても不思議ではない。

(D4DR社長)

〔日経MJ2015年8月14日付〕

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