2018年7月17日(火)

大企業のベンチャー投資 短期集中支援の新潮流
サムライインキュベート社長 榊原健太郎

2015/8/18 12:00
保存
共有
印刷
その他

 イスラエルでは英語が通じるが、公用語はヘブライ語だ。そのため、外国人がイスラエルでビジネスをするとき、相当なコミュニケーションコストがかかってしまう。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

 サムライインキュベートはイスラエルの拠点で日本語もできるイスラエル人のヨニー・ゴラン氏を採用した。コミュニケーションの負担が軽くなり、弁護士費用や税金、光熱費など余分に支払ってしまっていたランニングコストも大幅に削減できた。言語の壁がほとんど心配なくなったのがなによりの救いだ。

 当社はイスラエルに順応し、スタートアップへの投資を重ねてきた。このほど「デモデイ」を開いた。増資などに応じてくれる投資家を探すため、我々の投資先企業を紹介するイベントだ。

 デモデイでは当社の投資先の16社を紹介した。分野は人工知能(AI)や画像解析など多岐にわたる。現地のトップレベルのベンチャーキャピタルやメディアなどから合計150人が訪れた。

 その結果、3社で増資が決まる見通しとなるなど十分な成果をあげた。このデモデイを境にイスラエルでのサムライインキュベートの評価が高まったと確かな手応えを感じている。ようやくイスラエルで当社が認められた日になったのではないだろうか。次回のデモデイは半年後に行い、新たに15社ほどのプレゼンを予定している。

 世界中のスタートアップや投資家、大企業がイスラエルに集まるイベント「DLD」の開催が9月に迫っている。日本の使節団代表として当社も参加する予定だ。日本企業の参加が非常に多く、今後の大きなトレンドになるだろう。

 日本企業はハイテク分野でのM&A(合併・買収)やR&D(研究開発)で後れを取っていた。ここにきてようやくイスラエルに進出する兆しが見えてきた。

 大企業が社外から新しい技術や革新的なサービスを取り入れる「オープンイノベーション」の流れが日本でも起きている。イスラエルでもそれを求める企業が増えている。米グーグルやマイクロソフト、IBM、韓国サムスン電子などがイスラエルのスタートアップとの接点を求めている。

 彼らのやり方はそれまでのオープンイノベーションとは異なる。大企業がスタートアップへの出資や買収を検討するときには相当な時間がかかってしまう。先にあげた大企業はスタートアップを全面支援する短期育成プログラムという形をとることによって、オープンイノベーションを加速させている。

 具体的には10社ほどのスタートアップを選び、3~6カ月間で大企業の経営資源(リソース)を活用しながら支援する。数カ月の間、大企業が資金や人材などの資産を提供する。

 彼らは直接買収して取り込むというよりも、まずはコミュニティーの形成に力を入れている。イスラエルでは人を気軽に紹介してくれる文化ができており、コミュニティーを作ることで優秀なスタートアップが集まる仕組みを作れるのだ。

 日本企業が同様の取り組みをするには課題が多い。イスラエルでの存在感が乏しい日本企業は、拠点となる場所を探すのにも苦労する。

 生活スタイルや文化の理解にも時間がかかる。現地のメディアや起業家たちとのネットワークや育成の仕組み(エコシステム)を築くまでに相当なコストも発生してしまう。

 このような課題を解決するため、当社は大企業によるイスラエルのスタートアップ育成プログラム支援を始めた。イスラエルのハイテク技術を活用し、日本企業のオープンイノベーションを加速させたい。イスラエルでオープンイノベーションを検討する大企業との協業を望んでいる。

[日経産業新聞2015年8月13日付]

保存
共有
印刷
その他


[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報