安全最優先し原発再稼働を着実に

2015/8/12付
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九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が11日に再稼働した。東京電力福島第1原発の事故後にできた新規制基準を満たす原発として、初の運転再開となる。国内で約2年続いた原発稼働ゼロにも終止符が打たれた。

東日本大震災から続く電力の供給不安を拭うには、原発の着実な再稼働は欠かせない。一方で再稼働を懸念する国民はなお多く、この先、原発にどの程度依存していくかも曖昧なままだ。政府が原発の位置づけを明確にし、原子力規制委員会も規制の意味を国民に丁寧に説明すべきだ。

電力不安の解消急げ

今夏は記録的な猛暑になったが、いまのところ大停電は起きておらず、電気は足りているように見える。だが先の大震災による電力危機から脱したわけではない。

電力各社は原発が停止した分を天然ガスなど化石燃料の輸入で補い、2014年度の燃料代は震災前より3兆4千億円増えた。電気料金は家庭向けで2割、産業向けで3割上がり、景気回復の足かせになっている。

温暖化ガスの排出量も震災前より1割近く増えた。日本のエネルギー自給率は主要国では最低水準の6%まで下がり、10%程度あった石油危機前より低い。

こうした危うさを減らすには、安全性を確認できた原発を着実に再稼働させる必要がある。

川内1号機の再稼働でまず重要なのは、安全な運転を軌道に乗せることだ。フル稼働するまで約10日、最終点検に1カ月弱かかる。九電は営業運転に入ってからも気を抜かず、安全確保に万全を期してほしい。トラブルが見つかれば隠さず公表し、状況によっては再稼働を仕切り直す覚悟も要る。

福島原発の事故で「原発事故は起きない」とした安全神話は崩れた。政府や規制委も残る課題への対応を急ぎ、名実ともに安全神話から決別しなければならない。

川内原発は新規制基準を踏まえて耐震性を高め、津波に備えた非常用電源なども増やした。しかし規制委の田中俊一委員長が言うように、この基準は安全確保のための「最低限の対策」だ。

基準をクリアしても事故のリスクはゼロにはできない。大事なのは、事故が起きても拡大を食い止め、住民の被曝(ひばく)を防ぐ実効性のある備えだ。

川内原発では半径30キロメートル圏にある9市町が事故に備えた避難計画をつくった。5キロメートル圏内の住民はバスなどで迅速に避難し、それ以遠では屋内退避で被曝を防ぐことを基本とした。

だが住民が参加する避難訓練の実施はこれからで、机上の計画に終わらないか不安が残る。高齢者らも安全に避難できるよう細部を詰め、訓練を通じて実効性を高めることが欠かせない。防災対策にゴールはなく、再稼働後も国による不断の支援が欠かせない。

住民や自治体が抱く不安や疑問を国や電力会社がくみ取り、安全対策や避難計画に生かしていく場も要る。英国やフランスには利害関係者が膝詰めで協議し、電力会社に安全対策などを提案する仕組みがある。日本でも真剣に考えるときだ。

将来、原発にどの程度依存するのか、国が位置づけをもっと明確にすることも不可欠だ。

原子力の長期展望示せ

川内1号機に続いて、九電は10月に2号機を再稼働させる。安全審査に合格済みの四国電力伊方原発などでも、今冬までに再稼働が見込まれる。規制委が審査中の原発も20基にのぼる。

政府が7月に決めた長期エネルギー需給見通しは「30年時点で電力の20~22%を原発で賄う」とした。震災前の28%より低く、原発の比率は下がる。だがこれが長期的に原発依存度を下げていく通過点なのか、この水準でずっと維持をめざすのか、なお曖昧だ。

福島原発事故を受け、政府は「原発の運転年数は原則40年」と定めた。これを厳格に守るなら、1970~80年代にできた原発は今後相次いで廃炉になる。

こうした自然減に委ね、原発依存度を長期的に下げていくのか。あるいは例外的に運転延長を認めたり、新増設したりして原発比率を維持するのか。これは規制委だけが判断する問題ではない。政府が国民に開かれた場で議論を深める必要がある。

原子力をめぐっては使用済み核燃料の再処理や、それに伴って生じる核のごみの最終処分をどう進めるかなど、多くの課題が先送りされてきた。これらに正面から向き合い、再稼働にあわせて具体的な原子力政策を示すときだ。

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