/

テレビ・ネット融合の成功事例 SNS共有で視聴率アップ

(徳力基彦)

日経BPが主催する「ソーシャルテレビ・アワード2015」が7月21日に発表された。ソーシャルテレビ・アワードとは、インターネットやソーシャルネットワーク(SNS)とテレビの融合に取り組んでいるテレビ番組を表彰する賞。今年で4回目となる今回、大賞に輝いたのは「バーチャル高校野球」だった。

朝日放送が全国高校野球選手権大会のテレビ中継と連携する形で、PCやスマートフォン(スマホ)など様々な端末で、夏の甲子園全試合のライブ配信を閲覧できるようにした非常に先進的な取り組みだ。

ただ単にテレビと同じ映像をネットでも配信するのではない。視聴者が自分の見たいアングルを4パターンから選べるようにしたり、試合の動画から好きなシーンをSNSなどで共有できたりする機能がある。期間中に1000万人以上による約6500万のページビューを獲得した。

さらにこの取り組みがすごいのは、視聴率の上昇にも貢献した点だ。テレビ中継と同じ映像をネットにも配信したら、一見テレビの視聴率は下がるリスクが高まるように思える。だが、実際には見られる端末が増えて、SNSの共有機能が実装されることで、ネット上で甲子園を話題にする人が増えた。そして視聴率の向上につながった。

こうしたネットの取り組みがテレビ番組の視聴率に良い影響をもたらすのではないかという議論は以前もあった。だが、高校野球のような国民的イベントにおいて結果が出たというのは非常にインパクトがある。

授賞式では朝日放送の中村大輔氏のスピーチが印象的だった。年々高校野球中継の視聴率が低下傾向にある中で「野球の魅力はこんなもんじゃないはず」という意識が、今回の挑戦につながったという。

実は、同日、日経デジタルマーケティング賞を受賞した「金曜ロードSHOW!」の受賞スピーチにおいても、日本テレビの谷生俊治氏も「このままではテレビにおける映画放送がなくなってしまう」という危機意識から、会員制サイト「金曜ロードシネマクラブ」を創設。映画をSNSでつながった仲間と一緒にみるという新しい取り組みに挑戦することにした経緯を話していた。

筆者はソーシャルテレビ・アワードの審査員を第1回から担当している。3年前はどこのテレビ局も半信半疑で試行錯誤しながら取り組んでいた。昨年頃から、明らかにネットとの組み合わせにより、テレビの視聴率やビジネスにも貢献するケースが着実に増えているように感じる。全ての番組にソーシャルメディア連動が必要なわけではないが、成功パターンは見え始めてきた印象だ。

10年以上前に「ネットとテレビの融合」が話題になった。この時はライブドアや楽天などのネット企業によるテレビ局の買収という構図が話題の中心だったため、ネットはテレビの敵だという印象がつきまとい、今でも誤解している人は少なくないと聞く。

ただ、ネットやソーシャルメディアにおける主役はネット企業ではなく視聴者一人ひとりだ。視聴者がSNSでテレビ番組自体を話題にしたら、ネットはテレビ番組にとっては敵ではなく明らかに味方になる。そうした真の「ネットとテレビの融合」を、「バーチャル高校野球」や「金曜ロードSHOW!」が見せてくれている。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

〔日経MJ2015年8月7日付〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン