2019年2月24日(日)

「安全な国」担うサイバー人材の育成急げ

2015/7/30付
保存
共有
印刷
その他

サイバーセキュリティー問題が深刻化している。政府の年次報告によると、2014年度に検知された政府機関へのサイバー攻撃は、主なものだけで264件と前年度から倍増した。その4割が日本年金機構の個人情報流出の原因となった標的型メールだ。企業への不正アクセスも増えた。

政府は近く新しいサイバーセキュリティー戦略をまとめる。日本全体が日々脅威にさらされているとの危機感を持ち、国を挙げて備えを急がなければならない。とくに重要なのは人材の育成だ。

情報処理推進機構の調べでは、企業でセキュリティーに従事する技術者は26万5000人だが、8万人ほど不足している。いまいる技術者も6割はスキルが不十分で教育、訓練が必要とされる。

それにもかかわらず、企業の動きは鈍い。セキュリティー人材を育成していない企業は7割にのぼる。投資余力のなさを理由にする企業が多い。問題意識を欠いており、放置できない事態だ。

米国では、走行中の車を離れた場所から操るハッキングが技術的に可能とわかり、リコール(回収・無償修理)を迫られる事例も出てきた。車や家電など様々なものがネットにつながる時代を迎え、サイバー攻撃が現実空間をも揺るがすリスクが明確になった。

企業は社内の情報を守るだけでなく、製品の安全性を確保するためにも、セキュリティー技術の向上を経営課題とはっきり位置づけるべきだ。人材の厚みが競争力に直結するとの発想で、育成を速やかに進める必要がある。

国としてセキュリティー産業を振興する視点も要る。政府は日本再興戦略に、ファンドを使ったセキュリティーベンチャー創出を盛った。実効性のある具体策を示してほしい。産業としての発展が大学などでの人材育成に弾みをつける。そんな循環をつくりたい。

国家の関与が疑われるサイバー攻撃が増えるなか、官民連携も大切だ。巧妙かつ執拗な攻撃に対抗するには、警察や自衛隊と企業が協力しやすい体制が欠かせない。当面の人材不足を補ううえでも、情報や知恵の共有は有効だ。

社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の導入や東京五輪に向け、日本へのサイバー攻撃が激しくなるとの見方がある。日本は治安のよさなどから「安全な国」とみられてきた。サイバー問題でその評価を損ないたくない。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報