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高島屋、美術品をネット通販 若年・地方富裕層の開拓なるか

高島屋が6月から美術品のインターネット販売を本格的に始めた。ネット限定で企画展を開いたり作家が作品を作り上げる過程を動画で配信したりする。美術品のネット通販の浸透をきっかけに若い世代が美術品に興味を持ち始めている。もともと美術部は同社の強みの1つ。画廊を訪れるのは敷居が高いと感じる世代を呼び込めるか。

高島屋の美術部は1909年に設立され、今年で107年を迎える。過去には、日本画家の巨匠である横山大観や下村観山などの大家とのつながりをもったこともある歴史と伝統のある部署だ。

ただ、その歴史と伝統が、新たな顧客を呼び寄せる上で足かせになっていた。顧客一人ひとりに専門知識を持つ販売員が十分な時間をかけて接客してきた美術品のネット販売に社内で賛否両論があった。だが、最終的には若年層や地方の富裕層に認知してもらうにはネットの活用が欠かせないと判断した。

同業他社では美術品を大手オークションサイトなどに出展しているところもある。そのほうが断然、新たな顧客との接点を持ちやすい。だが高島屋はあえて「自社での販売にこだわった」(加賀信子美術部長)。

各作品がどのような背景で作られたのか、作家のどんな思いが込められているのかストーリーを伝えることが美術品販売には欠かせないと考えるからだ。

美術品のネット販売は主に3つ。ネット限定で企画展の開催・作品を販売する「ギャラリーZ」、高島屋の各店にある画廊で開かれている展覧会の、作家の作品を扱う「展覧会連動企画展」、高島屋美術部のバイヤーが幅広く選んだ「高島屋セレクション」だ。

ギャラリーZは店頭の画廊に比べ、わかりやすい趣向の現代アート作家の作品を主に集めた。紙とカッターナイフのみで風景などを写実的に描いた作品や、縄文文化をモチーフにした版画、メタリック色に光る茶わんなど30作品前後を展開してり、中心価格帯は5万~10万円。

合わせて作品づくりの過程を紹介する動画を見られる。どれもモダンな雰囲気で、即購入とまではいかないまでも、ファッションやインテリアに興味のある30~40代の世代が興味を持つと思われる内容だ。

展覧会連動企画展は店舗で展示・販売している商品をネットで扱うのではなく、展覧会に出品している作家が手掛けた他の作品をネットで販売する。「店舗とネットの相互送客」(加賀部長)のが狙いだ。個性的な絵画が集まる高島屋セレクションなどの作品もあわせて、サイトでは常時トータルで60~70の作品を展示する。初年度は100作品前後の販売を見込む。

現在高島屋のネット通販全体の売上高は100億円(2014年度)。今年度は120億円に引き上げる計画で、美術品の売れ行きも計画達成の大きな鍵を握る。今のところ、売上高は目標を上回り滑り出しは順調だ。

東急ハンズをはじめ大手が絵画のネット通販を強化する中で「価格が不透明」「画廊の販売員の接客がプレッシャーになる」といった不安は徐々に薄らいでいる。

比較的若い世代が癒やしや安らぎの空間づくりのために美術品に興味を持ち始めている。ネットをテコに、伝統と歴史を強みに変えて新たな顧客の掘り起こすことができるか試されている。(豊田健一郎)

[日経MJ2015年7月29日付]

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