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味覚にもデジタル化の波 感じ方、センサーで解析

(藤元健太郎)

これまでデジタル活用が進んでこなかった味覚の分野にもデジタル化の波がやってきた。甘味や塩味、酸味、苦味、うま味という5つの味をセンサーで解析し、複合的な感じ方を再現する技術の実用化が始まっている。

食のプロモーションは「すごくおいしい」というような抽象的な表現と、しずる感のある写真で雰囲気を伝えることが多かった。こうした中、明治がデータを使いプロモーションを展開した。「明治北海道十勝スマートチーズ」の販売にあたり、他社製品も含めて味覚データを分析。うま味が他社より強いことを味覚センサーで解析し、売り上げを伸ばしている。

味覚センサーが食べ物を組み合わせた時の味を「見える化」する

電子商取引(EC)サイトでも食品の味の違いを伝えるのは難しいため、味覚センサーによって味の違いを表現することが期待されている。あるワインのサイトではグラフで違いを表示している。チャートで味を表現したワインは、表示前の5倍売れたという。

ソムリエの「濃縮感と果実味」といった抽象的な表現ではなく、具体的に分かりやすく、といった消費者ニーズの高まりがあるのだろう。実際に高級ワインと近い味のお手軽ワインが、数値で可視化することで売り上げを伸ばすかもしれない。

こうした取り組みをしかけているのは慶応大発のベンチャー、AISSY(東京・港)。味覚センサー開発や味覚データの提供などを手掛ける。

同社の鈴木隆一社長は「クールジャパンの中でも日本食の輸出は期待が大きい分野だが、国によって味覚の好みは違う。その国の人々が好きな味覚を定量的に把握し、カスタマイズして輸出することも大事だ」と話す。

うま味に特徴がある日本食に対し、米国人は甘味を求める傾向がある。実際に江崎グリコのいちごポッキーは国によって味を変えて販売しているらしい。AISSYが分析したところ、米国で販売している商品は日本のものよりも甘味が強く、酸味が弱くなっているという結果が判明した。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

食べ合わせもとても大事だ。食材1つひとつの味ではなく、最終的に組み合わさった味がどうなるかがポイントになる。たとえばAISSYが赤ワインには肉、白ワインには魚といった定番の組み合わせを定量的に分析してみた。赤ワインとカルパッチョの場合、赤ワインの苦みがカルパッチョの微妙なうま味を消してしまうという結果が出た。白ワインの方が全ての味覚のバランスがとれることが証明された。

味覚センサーの機器は価格が高く、解析に時間とお金がかかる。費用が下がり、小さいECサイトやスーパー、レストランが導入できればプロモーションのあり方や商品の選び方、メニュー表示も大きく変わる。

今後は味覚センサーと人工知能(AI)との連携も期待される。過去のヒット商品との組み合わせて、新製品のヒット率を高める。また味覚データと栽培や飼育、製造工程などのデータを合わせれば、栽培温度や肥料と最終的な味覚との相関関係が明らかになるかもしれない。

ただ人間がおいしいと感じるのは味覚だけでなく食感や匂い、見た目などの要素も大きい。将来的には、このようにほかの感覚も加味してヒト型ロボットが試食するようになるだろう。ソフトバンクの「ペッパー」が「シェフ。少し柔らかすぎてしょっぱいです」と厨房で働く日もそう遠くないかもしれない。食ビジネスの可能性が広がってきた。

(D4DR社長)

〔日経MJ2015年7月17日付〕

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