/

実はアナログ「LINEグルメ予約」 「人力」注力する選択重要に

(徳力基彦)

無料通話アプリLINEが新たに開始した「LINE グルメ予約」というサービスが、ウェブ上でちょっとした話題になった。同社が試験的に始めたもので、文字通り飲食店の予約をするためのアプリだ。

ただ、公開当初はアプリは限定公開で、利用するためにはアプリ上で利用申請をして利用開始が承認されるまで待たなければならなかった。現時点では誰でも登録して利用できるようになっているが、筆者が見た時には予約番号が1万番台で、その後しばらくは数万人にとどまっていた。

LINEの登録者は国内だけで5800万人以上ともいわれている。LINEにしては「LINE グルメ予約」はかなり小さい規模でスタートしたといえるだろう。それもそのはず、このサービスはユーザーがアプリで予約した内容を、LINEのオペレーターが電話やシステムで店に連絡し「人力」で予約するという実にアナログなサービスなのだ。

飲食店の予約システムは、大手チェーンを除くとほとんど普及していない。規模の小さな飲食店からすると、予約システムを利用するやり方を覚える余裕すらなく、ほとんどの店が電話での予約が中心になっている。

そこでLINEはLINE経由での飲食店予約を普及させるための最初の一歩として、あえて飲食店側の電話予約に対応するために、自ら人力で予約を仲介するという実験に踏み出したわけだ。

ウェブサービスにおいては、一見すると、全てを技術力で解決するのが王道に見える。だが、実際にはどこに「人力」を注力するかが差別化の重要なポイントになる。

成功事例がある。例えば、クラウド名刺管理サービス大手のSansan(東京・渋谷)はスキャナの自動認識の精度向上に頼るのではなく、あえて人力で名刺入力を代行している。これによりほぼ100%の入力精度を達成し、名刺管理サービス大手としての地位を確立した。

最近はテレビ番組やCMの放送内容などをネット上で活用したサービスが増えている。これが実現できているのは、エム・データという会社の数十人のオペレーターの存在がある。彼らがテレビ番組で放送されている内容を手で文字入力し、動画の情報をテキストに落としているのだ。

2011年の東日本大震災の時にもグーグルがGoogleパーソンファインダーという、安否情報をウェブ上で確認できるサービスを提供して話題になった。実はこのサービスも手作業で実現していた。避難所に集まった名簿を、各避難所にいたボランティアたちが写真を撮ってウェブで共有。それをまた別の人が写真を見ながら一枚一枚手で入力していたのだ。

技術の進歩があまりに急速なため人力の存在をついつい忘れてしまいがちだが、全ての作業が一朝一夕でデジタル化できるわけではない。

もちろん技術的な開発力で他社と差をつけることは重要だ。だが、技術開発力が同じぐらいのレベルであれば、ほかの企業が嫌がるアナログな作業をいかに効率的に実施できるか、というところから本質的な差が出てくることが多い。

一度皆さんが取り組んでいる事業も技術とアナログのギャップをいかに埋めるかという視点で俯瞰(ふかん)してみてはどうだろうか。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

〔日経MJ2015年7月10日付〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン