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高まる子供の貧困率 教育支援の充実が急務

ライフネット生命保険会長兼CEO 出口治明

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2012年の我が国の「子供の貧困率」は16.3%になり、過去最悪を更新した。子供の貧困率とは、平均所得の半分に満たない世帯で暮らす18歳未満の子供の割合を示す。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

実に子供の6人に1人が貧困にあえいでいることを意味する。特に世帯の1割弱を占めるひとり親(シングルペアレント)の世帯では、約6割の子供が貧困に陥っているという。

原因は経済成長率の鈍化で子育て世代の所得が減少したことだ。働く母親の多くが非正規雇用のため、母子世帯の増加が子供の貧困率を押し上げているとの指摘もある。

貧困は子供の将来の幸せな人生の可能性の幅を狭めるだけではない。生活保護に代表されるセーフティーネット(安全網)のコストもかさみ、社会にとって二重の損失となることを僕たちは忘れてはならない。

真っ先に取り組まなければならないのは、貧困による教育格差の解消ではないだろうか。近代社会では、人が受けた教育のレベルと生涯所得はほぼ比例すると言われる。

どのような世帯であっても安心して義務教育を受けられるレベルまで経済的援助を増やすなど、早急に手を打つ必要があろう。義務教育以外にも、子供を育てるにはそれ以外の様々な費用がかかる。その点を含めて考えなければならない。

義務教育を終えた後の高等教育についてはどうするか。公立学校(大学を含む)の無償化が本筋だと考えるが、若者の学習意欲を高めるには、同時に何がしかのインセンティブ(動機づけ)も必要ではないだろうか。

我が国の銀行は貸出先がなくて困っているのだから、大々的に無担保の教育ローンを始めてはどうか。国は成績優秀者に教育ローンを代位弁済することで報いる。

この仕組みは社会人がローンを組んで大学院に進学する場合にも適用される。そうすれば学生は元を取るために必死に勉学に励むようになるのではないか。ローンの返済を考えれば、安易な進学にも歯止めがかかる。

シングルペアレントを中心にした親への支援も重要である。何よりも優先すべきは、シングルペアレントが働きやすい職場環境づくりに官民あげて取り組むことだと考える。保育所への100%入所、児童扶養手当の増額、生活保護における児童加算など、まだまだわが国がやれることはたくさんあるのではないか。

我々民間企業も意識を変えるべきだ。

10年の国勢調査では「ひとり親と子供から成る世帯」が全体の8.8%となった。総世帯の1割弱がシングルペアレント世帯になっているという時代の変化に、企業も対応しなければならない。

当社は「子育て世代の保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てられる社会をつくりたい」という思いで設立されている。当社のお店であるウェブサイトには「単身者向け」「ご夫婦向け」「ファミリー向け」に加え、子育て中の若手社員の発案で「ひとり親向け」というカテゴリーも用意している。

実際、シングルペアレントの方の加入も多い。「収入が少なく母子家庭のため保険料も節約し、万が一に備えておきたかった」「母子家庭で子供もまだ小さく何があるかわからない。仕事量も多くないため、助かりました」。こうしたお客さまからの声を聞くごとに、微力ながら社会のお役に立てていると実感している。

子供は社会の宝、僕たちの未来である。世界第3位の経済大国が、僕たちの未来の6分の1を貧困のままに放置しておいて、未来が良くなるはずがない。僕たち一人ひとりが意識することで変えられることが、まだあるのではないか。

[日経産業新聞2015年7月9日付]

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