2019年8月24日(土)

成長と財政両立の宿題は山積みだ

2015/7/1付
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政府が成長戦略(日本再興戦略の改訂)と、財政健全化計画を盛り込んだ経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)を決めた。

日本経済の最大の課題である成長力の強化と、財政健全化を両立する道筋を示せたとはいえない。むしろ課題を浮き彫りにした。

国と地方をあわせた日本の債務残高(借金)は国内総生産(GDP)の2倍程度もある。債務危機に苦しむギリシャよりひどく、先進国で最悪の状態だ。

及び腰の歳出抑制策

政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支を2020年度に黒字にする目標を掲げている。財政健全化計画ではそのための具体策が問われたが、問題は多い。

まず前提条件が甘い。物価変動の影響を除いた実質で2%程度、名目で3%程度を上回る経済成長が実現するシナリオを想定した。

構造改革により経済の実力を示す潜在成長率を高めることは正しい。しかし、先行きが不確実な中長期の計画で、楽観的な想定は控えるべきではなかったか。

財政再建は成長による税収増、歳出削減や抑制、増税の3通りが基本だ。安倍晋三政権は10%を超えて消費税率を上げる選択肢を排除しているわりに、歳出削減・抑制に及び腰だ。

国の政策経費である一般歳出について、過去3年の実質的な増加額が1.6兆円となっていることを「目安」にするという。何もないよりましだが、骨抜きにされるリスクはある。

歳出抑制の具体策も、いまひとつはっきりしない。焦点の社会保障分野では、価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の普及を急ぐ方針は示した。だが、効果の大きそうな項目の大半は実質的に結論を先送りした。

たとえば、医療費の伸びを抑えるため、医薬品の公定価格である薬価を毎年改定する案は「頻度を含めて検討する」という。原則1割となっている75歳以上の後期高齢者の窓口負担は「あり方について検討する」にとどめた。

高所得者の年金削減も含めた抜本改革の方向性を年末までに決めるべきだ。地方財政でも、リーマン危機後に導入した支援措置は撤廃してほしい。

15年度の税収は当初予算の想定より増える可能性がある。アベノミクスの成果だからといって、安易に補正予算の財源にせず、国債発行を減額するのが筋だ。

20年度の基礎的財政収支の黒字化は、財政健全化の一里塚でしかない。特に25年度には団塊の世代がすべて後期高齢者となり、放っておくと医療、介護、年金などの社会保障費が大きく膨らむ。

経済再生後に長期金利が上がれば、国債の利払い費も増えるだろう。20年度よりあとも着実に財政再建を進め、借金の対GDP比率を下げる。そんな息の長い取り組みを忘れてはならない。

「経済再生なくして財政健全化なし」という安倍内閣の基本方針は理解できる。ただ、今回の成長戦略がそれにふさわしい内容といえるだろうか。

ドイツにならって「第4次産業革命」と唱えるのはいいが、中身に乏しい。女性、若者、高齢者、外国人材の活用をさらに進め、規制改革で技術革新や新陳代謝を後押ししてほしい。

岩盤規制を突き崩せ

国家戦略特区で、遠隔診療や、小型の無人飛行機(ドローン)の実証実験などを進めやすくするのは前進だが、農業・漁業・林業、旅館業法などの「岩盤規制」は残っている。解雇無効の判決が出た後の金銭解決に道を開くといった難題にも取り組むときだ。

税制改革はこれからが本番だ。法人実効税率をできるだけ早く20%台に引き下げるための具体案を早期に固め、日本の立地競争力を高めたい。

女性がもっと働きやすくなるための配偶者控除見直しの検討は待ったなしだ。現役世代より年金受給者に手厚い税制の見直しは、社会保障の効率化にもつながる。

通商分野では、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の前進をテコに、欧州連合(EU)などとの経済連携協定(EPA)交渉を加速すべきだ。

エネルギー分野では、安全性を確認した原子力発電所を再稼働するとともに、温暖化ガス削減の前提となる省エネルギー対策をもっと前進させる必要がある。

安全保障関連法案はもちろん重要だが、「経済最優先」という政権運営の基本を崩してはいけない。経済と財政を両立するための宿題が山積していることを、首相は肝に銘じてほしい。

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