オルビス、得意先優遇ポイント制 「買えば買うほどお得」徹底
中価格化粧品のオルビスがカタログやインターネット通販の顧客を対象に昨年9月に導入した「ポイント制度」が好評だ。顧客の直近1年間の買い上げ金額に応じて最大30%還元するという内容。よく買い物をするほど手厚いサービスを施す。今後はロイヤルティーの高い層に限定した商品も作っていく方針だ。

「お客様とのコミュニケーション改革がブランド価値の向上には欠かせないと判断した」。オルビスの阿部嘉文社長はポイント制度を取り入れた理由についてこう語る。 ポイント制度の概要はこうだ。直近1年間の買い上げ総額に応じて、4段階に顧客を分類する。年間1万円未満なら10~25%、同5万円以上になると15~30%といった具合だ。1ポイント=1円で次回の買い物から利用できる仕組みだ。同じ段階でも1回あたりの注文金額で還元率が異なる。
競合と比べても、還元率は高い。例えばファンケルだと、年5万円以上購入しても還元率は最大9%にとどまる。継続して同社の商品を購入しているロイヤルティーの高い顧客にはこれまで以上、また競合他社以上のポイントを与え、お得感を印象づけた。
これまでは新規顧客を増やそうと、その都度の購入金額に応じて即時に割り引きしていた。これだと、たとえ10年間、購入していても割引率は初めての購入者と変わらない。通販事業を統括する岩永利文取締役は「ポイント制度にして顧客を識別し、買えば買うほど大切にする姿勢をはっきりと見せた」と説明する。
目指すのは顧客1人ひとりに応じた徹底したワン・トゥ・ワンマーケティングだ。これまでも過去の購入履歴から商品を提案したり、メールマガジンの内容や会員誌のプレゼントを変えたりするなど、徐々に取り組みを始めてきた。
だが購入履歴が分かっても、購入までに他にどんな商品情報をチェックしたのか、サイトの閲覧頻度は変わらないか、といったログ情報を使った細かな購買行動まで分析できていない。「2017年には顧客が気づいていない需要をくみ取った先回り提案をしたい」(岩永取締役)という。
着々と布石作りを進めている。例えばコールセンターに寄せられたクレームは従来、その商品に紐付けていたが、2年前からは顧客に結びつけて管理するようにした。
4月からはヤフーとアスクルが共同運営するネット通販「ロハコ」にも出店した。ロハコでオルビスの商品を買う人は必ずしも目的買いでない場合もある。オルビスとの関係が薄い客がどんな商品に興味を持っているのかを検証し、精度の高い商品提案をするためだ。
一連のコミュニケーション改革は成果として表れている。14年2月に発売した抗加齢化粧品「オルビスユー」のヒットも相まって、14年12月期の売上高は前年比8.6%増の523億円だった。15年1~3月の通販の顧客単価は駆け込み需要があった前年同期と比べても9.7%増加した。
今後は店舗のポイント制度と統合したり、他社のポイントカードとの提携も視野に入れる。阿部社長は「ポイント制度を充実させて顧客のライフスタイルを正確に把握し、顧客に寄り添うブランドとして成長していく」と意気込む。ブランドスイッチの多い中価格帯の化粧品で生涯顧客をつかめるか。改革の成否が問われるのはこれからだ。
(杉浦恵里)
[日経MJ2015年7月1日付]