フューチャー・デザイン 西條辰義編著 将来世代の視点持つ仕組み提唱

2015/6/22付
共有
保存
印刷
その他

 内外の経済・社会が直面している政策課題を見ると、現世代の人々に加えて、将来世代の人々にも深く関わるものが多い。地球温暖化や原子力発電所の放射性廃棄物の処理などが、直ちに思い浮かぶ。本書は、これらの問題に対する政策を考える場合、将来世代と現世代との間で、世代間の利害を調整する仕組みを構築することが必要で、「将来そのものを仮想的な将来世代との交渉でデザインし、それを達成するために様々な仕組み」を考えようとする。

(勁草書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
画像の拡大

(勁草書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 本書は、経済や社会の運営を次のように捉える。社会の発展を支える根幹は、経済面の「市場」と政治面の「民主制」であるが、「世代間を超える資源配分や持続可能性に関わる問題解決には不十分」であり、選挙における現世代重視の姿勢を排除できない。加えて、意思決定するヒトは、目先の利益にとらわれ、過度に楽観的になる傾向があると考える。そこで、市場と民主制の機能を補完すべく、将来世代を現在に取り込む工夫がいるが、その役割を政治家には期待しがたく、結局、担えるのは、官庁となるので、「将来省」の設置が求められるとする。

 各章では、こうした考えを、公害・環境汚染、森林管理、水資源の枯渇、持続可能な都市・地域社会の形成、財政赤字など、代表的な政策課題ごとに、当該分野の専門研究者が検討している。例えば地球規模の環境問題である温暖化についてみると、「数世代をまたぐ超長期の時間スケールで問題を捉え、解決に向けて取り組んでいかなければならない」が、現状、「国際的な取り組みが十分に機能しているとは言いがたい」。打開のためには、「子孫が現在のペースで温暖化が進んだ世界に住むところをイメージ」できる「仮想的な将来世代」の視点から問題を深刻に捉え協調策を展開することが必要とする。日本の公害問題で見られた悲惨な経験を国際的に生かすことも提起される。

 市場での経済取引を対象とする既往の学問的研究では、現世代に関わることがら、客観確率で将来を予測できることがら(リスク)などは精緻に分析しているが、将来世代、主観確率での将来予測(不確実性)やコミュニティ活動に関わることがらなどに関しては、不十分な分析にとどまる。

 この分野の研究は、まだ歴史も浅く、実用的な提言ができる段階とは言いがたいが、本書は、先端的取り組みをケーススタディとしてまとめており、政策に関心を寄せる多くの人々に役立つ内容となっている。

(学習院大学名誉教授 奥村 洋彦)

[日本経済新聞朝刊2015年6月21日付]

フューチャー・デザイン: 七世代先を見据えた社会

著者:西條 辰義
出版:勁草書房
価格:3,024円(税込み)

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワードで検索

西條辰義

【PR】

【PR】

主要ジャンル速報

北海道 21日 7:01
21日 7:01
東北 21日 7:01
21日 7:01
関東 21日 7:01
21日 7:01
東京 21日 7:00
21日 7:00
信越 21日 7:00
21日 7:00
東海 21日 23:18
21日 22:52
北陸 21日 6:02
21日 6:01
関西 6:00
2:00
中国 6:00
5:59
四国 6:00
5:59
九州
沖縄
6:00
21日 22:48

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報