2019年2月16日(土)

春秋

2015/6/12付
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各地の本屋さんで、あるカレンダーが売り上げの上位に顔を見せ続けている。元プロテニス選手、松岡修造さんによる叱咤(しった)激励の言葉を集めた日めくりだ。発行部数は90万部を超えた。ネット通販のアマゾンでは、「本」の部門で今年上半期の売り上げトップだという。

▼「崖っぷち、だーい好き」「自我を捨てろ。雪ダルマになれ」――。独特な言い回しで耳を傾けさせるテクニックは、子供向けテニス教室での指導経験から身につけたそうだ。版元に届いた声を読むと、予想以上に真剣な人が多い。就職活動中の学生や仕事に向かう若者が、自分に活を入れるため部屋に飾っているようだ。

▼似た動きは文芸書にもある。若手社会人の間で「お仕事系青春小説」と呼ばれる作品が読まれている。店の経営や街おこしなど目の前の仕事に全力でぶつかり、周りに助けられ、壁を乗り越え、成長する。そうした主人公の姿が共感を集めるそうだ。業界の暗部や出世競争を描いた昔のビジネス小説とはだいぶ毛色が違う。

▼いまの若者にとって、自分が早く成長できるかどうかは職場選びの大事な物差しだ。「即戦力になれ」「労働力の流動化に備えよ」。そうせかされ続けた影響かもしれない。一人で成長するのは難しい。自分の良さを見つけ、伸ばしてくれる上司や仲間がほしい。そんな願いを日めくりや小説に重ねているようにも見える。

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