スマホでコミュニケーション 「LINE」型が主流に
藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)
スマートフォン(スマホ)が普及すれば当然、人と人とのコミュニケーションに変化がある。ニールセンの最近の調査によると、1年前に比べ電子メールの利用率が減少の兆しを見せる一方で、交流サイト(SNS)のフェイスブックのメッセンジャーなどが前年比倍増している。

電子メールはアドレスが分からなければ送信できないうえ、見出しを書かねばならず堅苦しい。開封率も落ちる傾向にある。これに対し、メッセンジャーは気軽に送信でき、個人のいる場所に届くので、スマホとの相性は抜群だ。
フェイスブックはパソコン版の機能の1つ、メッセンジャーをスマホ用に「フェイスブック メッセンジャー」として独立させて成功した。モバイル版のフェイスブックアプリの月間アクティブユーザー数は全世界で12億人で、メッセジャー単体で6億人に及ぶ。
これほどの規模を獲得してもなお足りないとばかりに、同社は競合のメッセンジャーアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」を昨年買収した。こちらも8億人だ。
日本などで人気の無料通話アプリ「LINE(ライン)」は2億人。米国などで人気の写真投稿に特化したメッセンジャー「Snapchat(スナップチャット)」も同じく2億人。楽天傘下で、無料通話が売りの「Viber(バイバー)」は2億4千万人だ。
スマホでのユーザー獲得競争では、すでにSNS同士のし烈な競争の時代は終わり、焦点はメッセンジャーに移った。米国のある調査で、2015年の間に4大SNSのユーザー数を4大メッセンジャーのユーザー数が超えるとの推測もある。SNSよりメッセンジャーが重要な時代となっている。
次は、これだけの規模のユーザー数を各社がどう利用するのかに焦点が移る。電話やメールの後継というだけでは稼げない。発展の方向は大きく2つある。外部事業者と連携して便利なサービスを強化する「プラットフォーム化」と、豊富なコンテンツを次々に提供する「メディア化」だ。
メッセンジャーを利用した新事業ではラインが先行している。将来を見据え、早い時期からゲーム課金やスタンプの売買により収入を確保したほか、「ライン ニュース」「ライン マンガ」などコンテンツを充実させた。さらにプラットフォーム化構想を推進するため外部企業と連携。決済やタクシー配車など幅広いサービスを手掛ける。

フェイスブック メッセンジャーもプラットフォーム化を打ち出した。外部の開発者に連携に必要な機能を公開し、様々なサービスや事業を生み出そうとする。本体のフェイスブックで成功したのと同様の手法だ。
一方、コンテンツ面での特色を強く打ち出したのがスナップチャットだ。すぐに消滅する写真や動画を投稿するユニークなアプリだが、今年に入り大手メディアと組んで「ディスカバー」というニュース配信を始めた。
「CNN」や「デイリー・メール」など11メディアが専用のニュース記事を動画や文章で1日5本ずつ提供する(翌日には読めなくなる)。これが話題を呼び、記事によっては100万もの閲覧数を獲得する。いずれ、ユーザー数を抱える他のメッセンジャーも同様の取り組みを進めていくだろう。スマホとメッセンジャーのコンビが利用者に最も身近なサービスの起点になりそうだ。
[日経MJ2015年6月1日付]