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春秋

「交通戦争」という言葉が生まれたのは1961年だった。ずばりその名を冠した読売新聞のキャンペーンが大きな反響を呼び、やがて一般化したという。日清戦争での日本側の死者を交通死は上回っている、これはもうクルマと人間との戦争だ――と訴えたのである。

▼戦争だから戦わなくてはならない。身を守らねばならない。それで広がったさまざまな対策のなかで、歩道橋は事故減らしの切り札とされた。死者が年間1万6000人を超えた70年前後にかけて各地に続々つくられ、実際に大きな効果があったのだ。日本社会は若く、橋の上り下りが苦にならぬ人も多かった時代である。

▼そんな話も今は昔。交通戦争は遠のき、景観を損ねると言われ、なによりも人々の高齢化ゆえに歩道橋は敬遠されるご時世になった。全国に約1万あるが老朽化も激しく、築数十年という代物が目立つ。自治体が撤去に踏み切るケースが増えてきたのは自然な流れだろう。昨年は東京・原宿の名物だった駅前陸橋も消えた。

▼上ってみれば眺めが良く、そこに立つ恋人たちなど絵になるから歩道橋は映画やテレビドラマにもよく登場した。都市になじんだ、そういう風景も変えていくのが高齢化のうねりであるに違いない。「交通戦争」誕生のころ、人口に占める65歳以上の割合は5%台だった。現在はその5倍、あの長い階段がますますつらい。

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