税で日本はよみがえる 森信茂樹著 経済再生への鳥瞰図 大胆・明快に

2015/5/25付
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本書はわが国税体系のあるべき鳥瞰(ちょうかん)図を大胆かつ明快に示し、日本経済再生の処方箋を見事に描き出す力作だ。(1)経済成長を税制で支援(2)企業の立地競争力の強化(3)資産・所得格差の是正(4)マイナンバー制度の活用による税・社会保障の効率化(5)財政健全化の5つの観点から消費・所得・資産の3つの税制を総合的に見直す「タックス・ミックス」のあり方を詳細かつ具体的に論じている。

(日本経済新聞出版社・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(日本経済新聞出版社・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

著者は、米国、ドイツ、英国、オランダ、スウェーデンなど先進各国の税制改革の事例から日本の改革への示唆を導き出す。「課税ベースを拡大し、税率を引き下げる」「法人税率を引き下げ、消費税率を引き上げる」「税と社会保障を一体的に改革する」「所得控除から税額控除へのシフト」等々、いずれも日本が目指すべき方向性だ。

法人税の改革では、表面税率、実効税率、限界税率の3つの概念から企業行動に与える影響を分析。法人事業税や消費税を含めた抜本的な地方税改革によって経済協力開発機構(OECD)加盟国平均並みの25%まで下げるべきだと断言する。

著者は、欧米諸国で導入されている、勤労意欲を高める給付付き税額控除が女性の活用促進やワーキングプア問題の解決だけでなく、消費税の低所得者対策にも有効だと説く。また、自助努力での老後の備えを支援する日本版IRA(個人退職勘定)やリスクテイクを促進し、ベンチャー企業輩出に資する新型日本版LLC(有限責任会社)の創設を唱える。少子化対策でも税の果たす役割は大きい。著者の提言は、子育てを支援する児童税額控除、ベビーシッター代の控除など。女性の就業を阻害する配偶者控除も単なる廃止ではなく、税額控除化、夫婦間で移転できる家族控除の創設を説くなどアイデアに富む。

資産・所得格差問題に対する見解は明快だ。格差の小さい国ほど経済成長率が高いという実証分析を示し、わが国の所得税は所得再配分機能が諸外国に比べて小さく、低下傾向にあると喝破する。したがって、各種所得控除の縮減や相続税、固定資産税など資産課税の強化が必要と主張する。筆者も同感だ。

著者の洞察は、シャウプ税制に始まるわが国税制の歴史から各種税理論の比較、税制の国際比較まで実に幅広く、深い。メリットだけでなく、課題や問題点にも目配りし、少子高齢化モデルとなるグローバル時代に相応(ふさわ)しい税制とは何かを徹底的に追求する。「税制のバイブル」とも言える好著だ。

(日本総合研究所副理事長 湯元 健治)

[日本経済新聞朝刊2015年5月24日付]

税で日本はよみがえる ―成長力を高める改革

著者:森信 茂樹
出版:日本経済新聞出版社
価格:3,240円(税込み)

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