界 藤沢周著 日本の土地に根ざす物語

2015/5/23付
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(文芸春秋・1200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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藤沢周の最新短篇(ぺん)集。「月岡」「千秋」「指宿」「化野」……と続く小説は、日本の土地に根ざした物語になっている。

とはいえ、藤沢作品にお馴染(なじ)みの、中年男の哀愁や疲労は健在だ。男は東京に残してきた女のことをどこかで気にしながら、目の前に広がる風景に心奪われる。酔いしれる。

たとえば「指宿」。知覧の特攻平和会館でみた、若い兵隊たちの残した言葉が主人公の脳裡(のうり)に甦(よみがえ)り、小説の行く先に影を落とし始めるのだ。旅行に誘った若い女からは同行を拒まれ、主人公は死とエロスのあわいを漂っていく……。

旅先の古典芸能が小説に奥行きを与えている。藤沢周は作家として円熟の境地に達しつつあるのでは?

★★★★

(批評家 陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2015年5月21日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

著者:藤沢 周
出版:文藝春秋
価格:1,296円(税込み)

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