ロボットさかなに熱い議論 交流仕組む3人の素顔 - 日本経済新聞
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ロボットさかなに熱い議論 交流仕組む3人の素顔

山田 剛良(日経NETWORK編集長)

4月中旬、東京・秋葉原で開かれた「ロボットパイオニアフォーラム」に百人超のロボット関係者が集まった。研究者やプログラマーだけでなく、ウェブ業界や商社、広告代理店の人々が熱い議論を交わしていた。

イベントを仕掛けた3人は今ロボット業界で注目株の存在だ。1人は羽田卓生さん。あらゆるロボットの制御を担う汎用の基本ソフト(OS)「ブシドー」を開発・販売するアスラテック(東京・港)の事業開発部長。羽田さんは「まずはロボットに携わる人々が集まる場を作りたかった」と話す。

ブシドーは経済産業省傘下の情報処理推進機構(IPA)が「スーパークリエータ」(天才技術者)に認定した吉崎航さんが開発。アスラテックは吉崎さんの成果を事業化するためにソフトバンクなどが2013年7月に設立。未来のマイクロソフトを目指すソフトバンクの隠し球企業だ。羽田さんはソフトバンクモバイルから移籍した。

当面の目標はロボットを活用したい様々な業界や業種にブシドーを売り込むこと。明確な市場がまだ存在しない中で、まずはロボットに興味がある人たちの人脈作りが肝要だと考えた。

そこで、羽田さんは旧知のアールティ(東京・千代田)の中川友紀子社長と、ロボットスタート(東京・渋谷)を立ち上げた中橋義博社長に声を掛けた。「みなで顔を合わせて飲みませんか?」

中川社長はロボット技術者の間でその名前を知らない人はいない存在。秋葉原電気街のど真ん中にオフィスを構え、ロボット開発の受託やコンサルティングを手掛けている。秋葉原のオフィスには国内外のロボット技術者が相談に訪れる。近くでロボットショップも開いている。もともとはロボット研究者で、日本科学未来館(東京・江東)の人気展示であるホンダのロボット「ASIMO」のショーの企画や運営なども手掛けていた。

一方の中橋社長はインターネット業界出身。黎明(れいめい)期のヤフーやオーバーチュアでネット広告事業の経験を積み、モバイル広告配信企業を自ら設立。「スマホ業界はもう先が見えてきた。もっと新しいチャレンジがしたい」と旧知の仲間を誘い昨年末にロボットスタートを設立した。目指すのはロボットを使った広告事業。「ロボットはいずれスマホのような存在になる。今スマホにあるサービスはすべて、ロボットにも必要になる」とみる。

そんな注目の3人が呼びかけたロボット"業界飲み会"には様々な業界から参加希望者が後を絶たない。最初の会合は2月に秋葉原のメイド喫茶を貸し切り、約80人が集まった。すぐに第2回の開催を決定。百人分用意したチケットはあっという間に売り切れた。6月には3回目も開く。

中川社長は今のロボットブームを「過去のブームとは様相が違う」と感じている。ASIMOやソニーの「AIBO」が登場した2000年代前半の時はロボットの作り手だけでブームを支えていた。今はソフトバンクや電通のようにロボット技術とは関係のない異業種が参入し、ロボットを使ったサービスを目指している。

2020年には2兆8000億円といわれる未来のロボット業界。経歴の異なる3人の手で、専門家以外にもロボットへの関心が広がりつつある。会場の熱気からロボット業界の未知なる可能性を実感した。

[日経MJ2015年5月18日付]

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