2019年6月19日(水)

具体例に基づく安保法制の議論を

2015/5/14付
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戦後の安全保障政策を大きく転換する法案が、国会に提出される。どんなに趣旨が正しくても、国民の支持を伴わない政策は長続きしない。世論の理解につながる論戦を深めてもらいたい。

関連法案は全部で11本にのぼる。主な目的は3つある。第1は、日本の存立が脅かされる明白な危険があるときに限り、集団的自衛権を使えるようにすることだ。

第2は、そこまで深刻ではないものの、日本に重大な影響が及びかねない危機が海外で起きたとき、自衛隊が、地理的な制約なしに米軍などを後方支援できるようにすることだ。このために提出されるのが、重要影響事態法案だ。

第3は、日本にただちに影響しない場合でも、国際貢献として自衛隊が多国籍軍などを後方支援するための法制づくりだ。国際平和支援法案がこれに当たる。

中国軍の台頭や武器の拡散など、日本を取りまく安保環境は厳しくなっている。米国が世界の警察を独りでは担えないなか、日本は米国や他の国々と協力し、自国と地域の安定を保っていく必要がある。新法案はそのためのものであり、趣旨は理にかなっている。

問題は、自衛隊が「どんな時に、何を、どこまで」やるのか、法案をみても明確なイメージがわかないことだ。世論調査では、今国会での法案成立を支持する回答は、半数以下にとどまっている。自衛隊の海外派遣が際限なく広がりかねない。そんな不安から反対している人も少なくないだろう。

なかでも、丁寧な説明が欠かせないのが、集団的自衛権や重要影響事態法案をどのようなときに使うかだ。危機にすばやく対処するため、この2つについては国会承認が事後になることも例外的に認めている。その分、政府の判断基準がより厳しく問われる。

朝鮮半島や中東に加えて、南シナ海でも緊張が高まっている。たとえば、南シナ海で何らかの危機が起きたら、集団的自衛権行使や重要影響事態法案の適用対象になるのか。それはどのようなケースなのか。政府は具体例をあげて、説明すべきだ。

一方、議論を深める責任は、野党側にもある。ただ反対するのではなく、より良い代案を示すことも大事だ。政府・与党側も議論次第では、法案の修正を排除すべきではない。メディアとしても、複雑な法案をかみ砕いて伝える努力を重ねたい。

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