若冲 澤田瞳子著 - 日本経済新聞
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若冲 澤田瞳子著

奇態の画家、鬼気迫る生涯

優れた小説に対する呼称はたくさんある。名作、力作、傑作等々。だが、さらにそれを上回るときはどういえばよいのか。こと本作に関する限り、私は"斯界(しかい)を震撼(しんかん)せしめる"という表現が最もふさわしく感じられる。

これまでにも様々な絵師を描いた作家がいた。だが、誰が奇態の画家・若冲を描こうなどと考えようか。これは前人未踏の作品である。凡人は若冲の絵の表面に現れた向日性を観る。しかしながら、作者はその内奥の闇に深く深く根を降ろす。

己(おの)れの業=妻お三輪が首を吊(つ)った蔵を見ながら筆をとる若冲。そして、若冲の贋作(がんさく)を描くことで彼に復讐(ふくしゅう)を果たそうとするお三輪の弟・弁蔵。

物語は、この2人を軸に、脇役に池大雅、円山応挙、与謝蕪村らを配して進められていく。

ストーリーは、中盤、「つくも神」が象徴的に使われるあたりから、さらに深みを増し、「鳥獣楽土」の老婆の登場など鬼気迫るという他はない。

そして、誰もが自分を置き去りにしていってしまう、という晩年の若冲の哀(かな)しみまで、作者はまるで若冲と一体化することで、その生涯を見事に解釈し切っている。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2015年5月13日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

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