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シリコンバレーのVCがデザイナーを登用する狙い

フィル・キーズ(米ブルーフィールドストラテジーズ アナリスト)

「シリコンバレー」といえば一般的に「技術」という印象が頭に浮かぶ。少し業界を知る人なら「ビジネス」という言葉も考え出す。しかし2015年3月に、ある出来事が起こったことで、今後は「デザイン」という言葉もイメージに加わることを予測する。

シリコンバレー出身のベンチャー投資家の中でクライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)は特別な位置付けだ。同社は、アマゾン・ドット・コムやグーグル、サン・マイクロシステムズ(現オラクル)、シマンテックなど一流の企業に投資してきたことで知られる。KPCBは10年にアナリスト、メリー・ミーカー氏を採用した。インターネット業界に関する豊富なデータを用いたプレゼンテーションでシリコンバレーに対する影響力が大きい。

さらにKPCBは14年1月に米国を代表する芸術系の名門校、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインのジョン・マエダ氏を「デザインパートナー」として採用した。15年3月にマエダ氏はミーカー氏の影響を受けて「♯デザイン イン テック」を発表した。

シリコンバレーでは以前からデザインに関心があったことが背景にある。スティーブ・ジョブズ氏がアップルに戻り、2000年代からのiPod(アイポッド)やiPhone(アイフォーン)の成功によって有力な企業に生まれ変わった。この歴史的な成功例にはジョブズ氏のデザインへのこだわりがあり、デザインが重要な要素として認識されるようになった。この時代から「デザイン シンク(Design Think)」という言葉がシリコンバレーに響くようになった。KPCBがマエダ氏を採用することはデザインを重視するという重要なサインだった。

マエダ氏が発表した資料の中では、KPCBに入社した14年1月から、合計6人のデザイナーがシリコンバレーのベンチャーキャピタルに入社している。さらに10年以降でデザイナーが共同設立したベンチャー企業のうち27社が他社から買収され、ベンチャー投資家に利益を出した。その中には12年にフェイスブックが買収した写真共有アプリのインスタグラムが含まれている。これに加えて13年以降に高い投資金額を集めたベンチャー企業のうち2割に、デザインの経験がある設立者がいる。

シリコンバレーでデザインに対する関心が集まっている要因として、現在の技術環境がある。今から20年前であれば予測できなかったような高い能力のハードウエアやネットワークなどの技術を手軽に入手することができる。その象徴的な存在の1つがマエダ氏も指摘しているスマートフォン(スマホ)で、消費者が生活しながら先端技術に触れることができる機会が拡大した。こうした技術を駆使しながら、ユーザーが喜びを体験できるようにデザインする重要性が高まっている。

シリコンバレーでは現在、あらゆるモノがインターネットにつながる「インターネット・オブ・シングス(IoT)」が脚光をあびている。今後もIoTに関連した製品が普及していくのは間違いない。これによってユーザーが先端の技術に触れることができる機会が拡大することに伴い、デザインという概念がさらに重要になりそうだ。

[日経産業新聞2015年4月28日付]

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