2019年9月16日(月)

6度目の大絶滅 エリザベス・コルバート著 最悪の「外来生物」としての人間

2015/4/29付
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地球の年齢はおよそ46億年。それに対してわれわれ人類の年齢はわずか10万年かそこら。最初の生命が誕生したのは地球が生まれて8億年後の、今から38億年前のことだ。そう言われても、すぐにはぴんと来ないかもしれない。

(鍛原多惠子訳、NHK出版・2400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(鍛原多惠子訳、NHK出版・2400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

これを高さ634メートルのスカイツリーに喩(たと)えると、人類の歴史は、2メートルある先端の避雷針の先っぽ1.4センチに相当する。

こんな話を持ち出したのは、本書の書名にある「6度目の大絶滅」を引き起こしている張本人は、スカイツリーの2センチ分にも満たない歴史しかない人類だと名指しされているからだ。

その前提として著者のコルバートは、6度目に先立つ5度の大量絶滅から話を解き起こしている。それはもちろん人類登場前の話で、原因もさまざまである。有名なのは、恐竜やアンモナイトを一掃した、6500万年前の隕石(いんせき)衝突だろう。

過去の5度の大量絶滅は、いずれもスケールが大きかった。それでもその痛手は、時間が解決してくれた。なにしろ地球にとって1億年とか10億年など取るに足りない時間なのだ。

それでは今、何が起こっていて、その何が問題なのだろう。コルバートはその答を求めて、絶滅が進行中の現場に足を運んでいる。色鮮やかなカエルが姿を消しつつある熱帯雨林、コウモリがバタバタと死んでいる北アメリカ東部。いずれも他の地域から入ったらしいカビが犯人だ。

熱帯の海では、海水の酸性化によってサンゴが溶け始めている。奇(く)しくも2億5000万年ほど前に起こった史上最大の大量絶滅に関して、火山噴火によって放出された大量の二酸化炭素が海に溶けて海水を酸性化したせいだとする最新の研究が報告されたばかりだ。

現在の酸性化も、気候温暖化の主因でもある化石燃料を燃やして出た二酸化炭素が関係している。カエルやコウモリを殺しているカビの移動に手を貸したのは人間だし、新天地でのカビの繁殖には気候温暖化も手を貸している可能性がある。

生物の多様性を急速に奪っているのは人間の所業である。世界中の生物にとって、人間は最悪の「外来生物」だという一言が耳に痛い。

もちろん、10億年後の地球にとって、そんなことは痛くもかゆくもない。これはぼくら人類にとって由々しき問題なのだ。未来を担う若い世代にこそ、読んでほしい本である。

(筑波大学教授 渡辺 政隆)

[日本経済新聞朝刊2015年4月26日付]

6度目の大絶滅

著者:エリザベス・コルバート
出版:NHK出版
価格:2,592円(税込み)

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