無駄な仕事をどう減らす 「任せる力」を育てよう - 日本経済新聞
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無駄な仕事をどう減らす 「任せる力」を育てよう

インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸

見せかけだけの忙しさ「busy work」が、時間に余裕のない日本人を生む非効率な慣習であることは先週のコラムで指摘しました。では「busy work」を根絶するためにはどうすれば良いでしょうか。唯一の対策はスケジュール・コーディネーションです。

たとえば、私のやり方をご紹介しましょう。私は30年来、すべての「To Do」をカレンダーに記録しています。加えて処理済みのTo Doには実際にその予定が有意義だったか、あるいは改善すべき点があったのかを書き込みます。そして毎週末、1週間の「To Do」をすべて振り返って、翌週をもっと素晴らしい1週間にするためにどうすれば良いのかを検討するのです。ポイントは、未来のことを書くだけではなく過去を見直すことも必ずあわせて行うことです。

スケジュール・コーディネーションを徹底する利点は主に2つあります。ひとつは放っておけば無限に増えてしまう「To Do」に「big or small」の判断をつける癖がつくことです。仕事にはすべて優先順位があります。しかし、「busy work」に陥る人は往々にして、「small」の仕事に忙殺されて「big」の仕事がおろそかになっています。1週間に1度でも急ぎではなかった仕事、他の人に任せることができた仕事、顔を出す必要のなかった会議といったムダを見つける時間を持つことができれば、翌週の「To Do」はもっと効率的にバージョンアップされるはずです。

2つ目の利点は、限られたリソースを重要な仕事に集約できるようになることです。人間が自身の成長に投資できる時間が有限である以上、才能と情熱は少しでも重要性の高い「To Do」に注がなければ誰かに長じることはできません。平均点は高いけれども突出した能力がないという多くの日本人に該当する特徴は、国際的な競争力の低下を招く重大な問題です。例とした私の手法は個人向けですが、スケジュール・コーディネーションの習慣は組織の運用にも応用できるはずです。

 「busy work」の負荷によって、優秀なプレーヤーが高い能力を発揮できなくなっていたら宝の持ち腐れです。能力や適性には優劣や長短があり、バイオリズムの上下動もあります。リーダーは妙な平等主義で全体に均質な負荷を分担させるのではなく、チーム全体の最大成果を引き出すための適材適所を、常に微調整しながら実施すべきです。

自らを優秀と信じるリーダーほど「何でも自分がやった方が早い」と考えがちですが、それは個人としても組織としても非効率な妄信だと気づかなければなりません。「何でも自分がやった方が早い」と本当に信じているのならば単に「他人に頼む技術」がないだけのこと。「他人に頼む技術」もまたプロセスの改善に繰り返し取り組むことで身につく能力といえるでしょう。

スケジュール・コーディネーションはオンラインのカレンダーサービスを無料で使える現代では、手書きの手帳を使うしかなかった時代よりもずっと低コストで継続できるようになりました。検索やソート、そして特に共有といったIT(情報技術)時代ならではの便利な機能は、チームとして「busy work」の問題に取り組むための心強い味方です。

(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸〈ツイッターアカウント @whsaito〉)

[日経産業新聞2015年4月24日付]

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