2018年7月20日(金)

アジアの人々の心に響いたか

2015/4/23付
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 ひとと話をするとき、持って回った言い回しでは、意図は上手に伝わらない。安倍晋三首相の言葉はアジアの人々の心に響いただろうか。バンドン会議60周年の首脳会議の演説で、先の大戦への「深い反省」を表明する一方、明確な謝罪はしなかった。

 今年は戦後70年の節目の年だ。日本は過去とどう向き合うのか。首相は8月に出す戦後70年談話について50年の村山談話、60年の小泉談話を「全体として踏襲する」が、同じ表現にはしない考えだ。

 「侵略戦争」「心からのおわび」などの表現を一言一句引き継ぐ必要はない。しかし、そうした要素がなくてよいわけではない。戦後日本が大事にしてきた平和主義が変質したと国際社会で誤解されては、新談話を出す意味がない。

 首相周辺はバンドン会議演説、今月末の米議会での演説、戦後70年談話を一連のものとして首相の思いを示したいと解説してきた。今回の演説は第1弾にふさわしいできばえだろうか。

 先の大戦の評価はひとそれぞれだが、アジアに多大な被害をもたらしたことは否定できない。10年前、当時の小泉純一郎首相はバンドン会議演説で村山談話に沿って「反省」と「おわび」を語り、そのまま小泉談話に盛り込んだ。

 それと比べると今回の演説の書きぶりは複雑だ。「侵略」を非難した60年前のバンドン宣言を紹介したうえで、「バンドンで確認された原則」を守り抜くと誓う。ほかにも、ある文章に他の文章を引用する入れ子構造の箇所がいくつかある。

 先の大戦が「侵略戦争」であったことを否認したのかと問われれば「侵略に触れている」と反論できる。だが、直接の言及はない。首相の支持基盤である保守派とアジア諸国との外交関係の双方に配慮した結果なのだろう。

 玉虫色の表現は国内では通用しても、外国人にもわかってもらえるだろうか。いまのままでは、戦後70年を平穏に終えるのは容易ではあるまい。

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