2019年6月26日(水)

春秋

2015/4/22付
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日本でもっとも難しい試験は、剣道八段の審査だといわれる。なにしろ合格率は1%。「七段取得の後10年以上修業し、かつ46歳以上」の猛者が集まり、それぞれ計4回立ち合う。技量はもちろん風格や品位も問われる。10年以上挑み続け、70歳代で合格する人もいる。

▼ぶら下げた五円玉を突く。対向車とすれ違う瞬間、ナンバーや車内の様子を見定める――。合格者の体験談が興味深い。それぞれに工夫を凝らして精進し、「結果が気にならなくなったとき」に合格したりするらしい。ところが正念場を迎えたはずの統一地方選の後半戦では、まるっきり違った戦いが繰り広げられている。

▼19日に告示された市長選は、津や長崎など県庁所在地を含む27市で立候補者が1人しかおらず、すでに無投票で当選が決まってしまった。合格率100%という驚きの審査は全体の3割を占める。前半戦で開票が終わった道府県議選でも、無投票が総定数の2割に上った。当選した理由は「立候補したから」というわけだ。

▼対戦相手としてだれも名乗りを上げないのだから、当選した候補者の側には非はなかろう。だが立ち合いの審査が行われなければ、技量も人格もよく分からないまま、首長の段位を授けることになる。地方の「消滅」さえいわれる時代である。生き残りがかかったはずの道場に広がる無審査をみれば、憂いはいよいよ深い。

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